今日も今日とて自己紹介 〜フランスに来てから香水ブランドを立ち上げるまで Part 3. 大学院&インターン選考編〜
こちらはムシュくん、語学学校時代の先生Anne-Sophieの猫で、
昨日登場したニュシュカちゃんの子供。
※本文とはなんの関係もありません。
昨日の記事では、あんな事やこんな事がありながらも、なんとか大学院に入学できたところまでを書いた。
大学院生活に関しては特筆することはない。授業には全く興味を持てなかったので、授業中はだいたい香水関連のウェブサイトを見ていた。
大学院生活の最後の半年間は、インターンをしてそれに関連した論文を書かなければならない。このインターン探しがなかなかハードだった。
まずは、フランスの就職活動事情を少し説明する。まずはフランスでは、多くの大学において、卒業の条件にインターンが含まれている。そして、大学で学んだこととインターンの経験を武器に就職活動をすることとなる。
日本のように、リクナビやマイナビのような就活サイトは存在しないため、志望する会社のHPを見て、そこから履歴書とモチベーションレターを提出する。会社によっては、リクルート用のページを用意しているが、多くの場合は、採用の窓口となるメールアドレスがチョロっと掲載されているだけで、そこに直接メールを送ることとなる。
また、日本と違い、フランスの就職活動は非常に保守的で学歴重視の傾向にあると感じた。フランスでは、大学の専攻と関係のない分野への就活は非常に難しい。ファイナンスやマーケティング関連の仕事に就こうと思ったら、ビジネススクールを修了している事がほぼ必須条件となる。日本のように、いい大学を出ていればどの分野でも引く手数多、ということはなく、ポテンシャル採用というのはほぼ存在しない。さらに、その分野における大学のランキングが重要視される。私のクラスメートが、大学主催の合同就職説明会で、あるコンサルティングファームの人に話を聞きに行ったら、「うちはHECかESSEC(どちらも有名なビジネススクール)卒しか採用しないよ」と言われたらしい。じゃあなんでうちの大学主催の説明会に参加したの?と思ったのだが…
加えて、私の大学は5月から11月の半年間のインターンを生徒に課していたが、多くの大手企業は7月から開始のインターンしか用意していなかった。インターン探しの最初の頃に、ゲランからインターン選考の話が来たのだが、時期が合わずに選考に進む事ができなかった。もし私がゲランでインターンをしていたら、その後のキャリアは全く違うものになっていたと思う。
ここまで読んでいただければご理解いただけると思うが、私のインターン探しが難航した理由は、
① ビジネススクールに通っていたものの、過去のバックグラウンドがファイナンスなので、香水やマーケティングと結びつかなかった
② 通っていた大学はそこそこ評価の高い学校ではあったものの、トップのビジネススクールではなかった
③ インターンの時期が折り合わなかった
の3点。それに加えて、私が外国人であることももちろん影響している。フランス人でもインターン探しは大変なのだ。いわんや外国人をや、だ。
香水ブランドで働くこと以外は眼中になかったため、大小問わず、ありとあらゆる香水ブランドに履歴書を送りまくった。何通送ったかよくわからないが、とにかく目についたブランド全てに送った。
送ったもののうち、9割はお祈りメールすら返ってこなかった。残り1割のうち、半分強は「うちはインターン生を雇う余裕も無い小さなブランドなの、ごめんね」というものだった。
残りの半分弱は、次の選考につながった。送った履歴書のうちの3%くらいなものだろうか。
しかし、そのうちの1社は「選考の日程が決まったら連絡します」というメール以降連絡が途絶え(後にインターンが始まった後、「引越しでバタバタしてて連絡遅くなってゴメンね!それじゃ面接しようか!」というアホみたいなメールがきた)、1社は面接をすっぽかされそれ以降音沙汰なし(そんなことってある…?)、1社はインターン開始後に「まだインターン探してる?」という連絡を受けた。
結局、実際に面接を受けたのはたったの2社だけだった。そしてこの2社は、不思議なことに、どちらも履歴書を送った時に、「この会社からは絶対連絡がこないだろうなぁ」と思いながらもダメ元で出願した会社だった。
なぜそう思ったか、というと、片方の会社は「現在募集を行なっておりません」とHP上に明記していたからで、もう片方の会社は、ブランドをローンチしたばかりで、その会社組織のなかに社長と共同設立者の2名しかいない事を知っていたからだ。前者は、日本にも店舗を出しているOfficine Universelle Buly(以下ビュリー)、後者は、Jean-Michel Duriez Paris(以下ジャンミッシェル)。
ビュリーの面接が先に行われた。社長との面接だったのだが、会うなり、「いいスーツ着てるね」と言われ(ファンドにいた時に仕立てた、光沢感があるライトグレーの、ギリギリまで丈を短くしたダブルのスーツを着て行った)、その次に「で、いつから働けるの?」と聞かれた。呆気に取られたが、組織としても香水ブランドの中では大きい方だし、勢いがあるブランドだから、悪い気はしなかった。何より、苦戦続きのインターン探しで、初めて採用が決まった瞬間だったから、嬉しかった。
この面接の後、人事担当の人から、「必要書類等について後ほど連絡をするから」と言われたのだが、結局連絡は待てども暮らせどもこなかった(フランスの杜撰さに引いている人もいるのではないだろうか?そう、そういう国です、フランスは)。その間に、ジャンミッシェルとの面接があり、そちらからも無事にオファーをもらった。
さて、あれだけ苦労したインターン探し、今なんと私の掌の上には、2つのオファーがある。どちらを選ぼうか?
香水関係者や大学院の同級生に意見を求めた。全員が、「ビュリーがいい」と言った。当然だ、勢いがあるブランドだし、日本にも支店がある。インターン終了後に雇ってもらえる可能性も十分ある。
しかし、意見を求めておきながら、実はその時点で、私の中ではインターン先は決まっていた。
私は結局この後、ジャンミッシェルのところでインターンをすることとなる。
決め手は何だったか?簡単だ、より良い香水を作っている方を選んだのだ。私は私の鼻を信じることにした。
ジャンミッシェルのブランドを知ったきっかけは、ブランドローンチ時のポップアップストアだった。その際に試したこのブランド最初の香水“L'Etoile et le papillon”は、その後しばらく私のお気に入りの香水となった。多分70mlのボトル1本半は使っている。
本当は今日ここでインターンのことまで書こうと思ったのだが、また長くなってしまったので、一旦インターンが見つかったところで今日の記事はやめようと思う。ということで、当初最終回の予定だった『自己紹介シリーズ』、次回まで延長です。乞うご期待!
それにしても、運命とは不思議なものだと思わないだろうか?前の記事まで読んでいただいた方にはご理解いただいているかもしれないが、学校や企業の不手際や不誠実な対応にここまで翻弄されつつも、どうにかこうにか大学院に入学できたり、インターンが見つかったりしている。そして、次回以降に詳しく書くが、このインターン先が最高の選択であったことがわかるのは、後々になってからなのだ…