私自身の完成
京都伊勢丹「サロンドパルファン2024」は4日目が終了した。
残すところあと2日。この土日が最大の盛り上がりを見せるはず。そう、ここからが本番なのだ。
今のところ昨年以上の盛り上がりだ。さて、どんな週末になるのやら…ちょっとドキドキ。
今回は京都伊勢丹の社員さんが出展者の休憩時間中にブースをケアする体制を整えてくれているので、安心して途中で休むことができている。せっかくそういう段取りになっているのだから、と私もしっかりランチとおやつの2回、休憩を取るようにしている。
休憩中に少しだけ本を読んでいるが、それが私にとっての大きな癒しにつながっていることに気づかされた。店頭接客を一時的に忘れて物語に没入することで、身体だけでなく心もしっかり休まるのだ。特に今読んでいるヘッセの『ガラス玉遊戯』は何度も読み返している本だが、今まさに私が必要としていた内容だと感じている。
ゆっくり読む中で今まであまり気にかけていなかった部分に改めて感動を覚えることが多々ある。特に数日前に読んだとある箇所が素晴らしく、そこをどういう形でか紹介したいと考えていたが、なかなかいいきっかけが見つからなかった。紹介しそびれてしまうのももったいないので、今日は思い切って、その部分をコンテクストがわかるように少し長めに引用しようと思う。
新しい学校へ進学するヨーゼフ・クネヒトが、不安を敬愛する音楽名人に打ち明けるシーンだ。
私は常々、クリエーションにおける「良し悪し」というものは、「好み」という主観的なものとは別に普遍的に存在しており、作り手はその普遍的な「良さ」を追い求めなければならない一方で、その追求によって生まれる「個別性」こそに価値が生まれる、と考えている。
それを音楽名人は、「君自身の完成にあこがれなさい」と表現した。こんなにシンプルで力強い言葉を、どうして私は今までの読書で見逃していたのだろう。いかに雑な読み方をしていたかがよくわかるし、繰り返し同じ本を読むことの重要性も痛感した。
店頭に立って香りを紹介していると、時として私自身の「完成」に対して疑念が生じる。そんなものは果たしてあるのかと、ふと考えてしまうのだ。
「完成」があるかどうかはわからないが、だからといってその不在の証明もまた不可能だ。だからこそ名人は完成を「目指しなさい」ではなく「あこがれなさい」といっているのだろう。どこにあるのか、そもそもあるのかさえわからないものは目指せないのだから。まずはそれがどこかにあることを「信じる」ところからはじめなければならない。そしてその「完成」までには「戦い」があるのだ。
そんな名人の言葉は、私に大きな勇気をもたらした。私は今、私自身の完成のための戦いの途中にいるのだ…そんなことを気づかせてくれたのだ。
『ガラス玉遊戯』は引用したい箇所がたくさんあるのだが、すべて紹介しているとキリがないので、より深く感動したものを選んでここに掲載している。
もしこれらの箇所に感銘を受けたのなら、ぜひ本書を読んでみることをおすすめする。素晴らしい作品だから。
いずれにしても、この週末は、京都伊勢丹の、まだ完成前の私に、ぜひ会いに来てね。待ってます。
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