“センパイ”との再会
横浜、滋賀、京都と回った1泊2日の出張帰りの新幹線車内、今日も今日とてnoteを書くために筆をとった。現在夜9時半。東京に到着するまでの2時間でどこまで書き上げられるかが今宵の睡眠に大きく影響するため、眠気をグッとこらえて今パソコンに向かっている。
元々予定されていた滋賀でのミーティングに横浜と京都の用事を“くっつけた”形となった今回の出張は、客観的に見ると“行かなくてもいい出張”だったかもしれない。現地に赴かなくとも、オンラインミーティングや、あるいはメールでも事足りた可能性は否定できない。
ただ私は、やはり実際に現場を見て、人と会って話して、その上であれこれ判断したいと思っている。時間とコストと労力をかけても、そしてそれが将来的にリターンにつながらなかったとしても、私は今後も性懲りも無く出張を続けることだろう。
それに、移動することで「思いがけないこと」が起こることがある。むしろ私にとっては、そちらの方が移動を意義深くするように思われるのだ。
今日はこんなことがあった。
私の個人のInstagramのストーリーズに今朝、新横浜から京都に向かっていることを掲載した。私は出張の際はいつも、どこに向かっているかをほぼリアルタイムで投稿するようにしている。
「あれ、今日京都にいるの?私も京都だよ。到着は3時ごろだけど」
“センパイ”から連絡があったのは、京都から滋賀へと向かう電車の中だった。私は滋賀でのミーティングののち、3時から京都でミーティング予定だった。その後は夜遅い帰りの新幹線まで特にやることを決めていなかったので、せっかくだからお茶でもしよう、ということになった。
“センパイ”に最後に会ったのは1年前、パリでのことだった。これも偶然に偶然が重なっての出来事だった。私たちはどうやらそういう運命になっているようだ。頻繁に会うわけではないが、思いがけないところでバッタリ鉢会うのだ。
会うなり“センパイ”は私の伸びに伸びた髭を見ながら、
「山奥で執筆活動とかしてそうだね」
と口にした。それはまさに、私が今ひそかにやりたいと思っていたことだったので、虚をつかれたようにドキッとした。
お互いの近況報告になったが、“センパイ”においてはこの1年、いくつかの大きな進展があった。“センパイ”はいつ何時会っても、何らかの小さくない変化がある。それは“センパイ”が自らの意思に忠実であることの表れでもあった。
私はそんな“センパイ”の姿が好きだった。
“センパイ”の友人も交えて夕飯に行くことになった。レストランに向かいながら、“センパイ”が、
「私も色々あって凹むこともあるけどさ、精神だけは病まないんだよね。どんなことでも何とかなる、って思っているから」
と話し出した。
「でも、辛いことって結構多いから、精神病んじゃう気持ち、俺は分からなくないかな」
それに対して、私はそう返した。
「そうかなぁ。少なくとも君は“かなり強い方”だと思うけどね」
ハッとした。今まで私は、自分がむしろ“弱い方”だと思っていた。もっというと、“かなり弱い方”だとすら考えていた。ちょっとしたことでひどく落ち込むし、落ち込むと何も手につかない。回復までには一定の時間がかかり、周りにひどく迷惑をかけてしまう。
“センパイ”は何の考えもなしに“かなり強い方”だと言ったわけではなさそうだった。そこには強い確証のようなものがあったように私には感じられた。“センパイ”は私のことを“よく知っている”ひとりでもあった。
「“センパイ”の方がよっぽど強いけどね」
少し考えて、私は口にした。
「まぁね」
“センパイ”は得意げだった。
初対面の“センパイ”の友人は、私の髭を見るなり、「日本人、ですか…?」と尋ねてきた。私は新幹線の時間のために先にお暇するまでの1時間程、この髭でいくつかの細かい笑いを取ることに成功した。店を後にした私は新幹線に乗る前に「シンカンセンスゴイカタイアイス」の宇治抹茶味を購入した。こうして私の出張は幕を閉じた。
新幹線の中、私は本当に“かなり強い方”なのかを、noteを書きながら考えていた。
残念ながら、私にその自覚はない。
ただ、「山奥で執筆活動をする」という、私の秘めた願望を、そうとは知らずに言い当てた“センパイ”の言葉を、私は無視することはできない。きっとそこには「本当のこと」があるように思われる。
今回の出張における「思いがけないこと」は、間違いなく“センパイ”との再会だった。これにどんな意義があるのかはまだ分からないが、それはいつか私のことを救ってくれるような気がする。
新幹線が東京に到着する前にこの記事を書き上げることができた。今夜はゆっくり寝られそうだ。
また性懲りも無く訪れる明日になれば、私はまた強くなっているだろうか。再起動してアップデートされたパソコンのように、“センパイ”によって何かが“インストール”された私は、もしかしたらもしかして、“かなり強い方”になっている…かもしれない。
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