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地方百貨店セレクトショップのジレンマとそれに対する提言

先日書いた「地方百貨店はどうあるべきか」という記事が、思いの外多くの人に読まれて驚いている。

これは地域における地方百貨店のあり方について考えてみた内容となっている。

今日これから書くことは、地方百貨店内の、百貨店独自のセレクトショップにおける「ジレンマ」についてだ。今まさにçanomaがポップアップをしている名古屋三越の「New York Runway」や伊勢丹新宿の「Prime Garden」など、各百貨店にはブランドがテナントとして出店しているエリアの他に、百貨店独自編集のセレクトショップが存在している。

こういったセレクトショップでポップアップをすると、必ず耳にするセリフがある。

それは、「人が足りない」だ。

人が足りない理由は様々なのだろうが、どうもあまりポジティブなものではなさそうだ。昔はもっと人がいたが諸々の事情により徐々に減らされてきたらしい。


人が足りないと、あれこれよくないことが起こる。

まずは、販売員1人あたりの業務が増える。接客以外にも、発注やら在庫管理やら、あれこれ業務が発生している。売り場でパソコンと睨めっこをしている販売スタッフをよく見かけるのはそういうことだ。

それにより当然、接客に割かれる時間は減る。私が店頭に立った多くの百貨店のセレクトショップで、お客がいてもその他の業務に追われて接客できていないところはかなりの数あった。もっというと、接客をしてしまうと業務が回らなくなるので、あえて接客を避けているところすらあったように感じられた。

接客が疎かになるとどんな悪いことが起こるか。大きく2つあると考えている。

1つ目は客が定着しなくなるということ。私は人が足りていない百貨店のセレクトショップで、販売員と顧客の強い結びつきを感じたことがない。普通のお店であれば、顔馴染みの客がある程度はいそうなものであるが、「あら○○さんお久しぶりです、お元気でしたか?」みたいな会話をついぞ聞いたことがないのだ。また、あるデザイナーがセレクトショップに期待することとして「客のワードローブを把握して、それに合った提案をすること」を挙げていたが、客との結びつきが希薄であれば、そういったことも当然できなくなる。

2つ目は顧客が育たなくなるということ。こういったセレクトショップに置かれているプロダクトは、ブランド力は弱いがいいモノである場合が多い。この手の商品は、その「よさ」を販売員がきちんと伝えることで初めて売れるし、それにより顧客も啓蒙され、よりしっかりとモノを買うようになっていく。この成長のプロセスは、接客ありきだと私は考えている。地方百貨店の販売員の方は勉強熱心で、商品知識自体は豊富であることが多いので、それがきちんと顧客に伝えられないというのはとても残念である。


このように、顧客が定着も育ちもしなければ、当然その売り場の売上は伸びていかない、売上が伸びないから人も増やせない、人が増やせないから接客に力を入れられない…という負のスパイラルに陥っているのではないか、と側から見ていて思う今日この頃。


これらの問題に対し、「人を増やす」だとか「オンラインを強化する」だとか、そういったありきたりの解決策を提案しても意味がない。それらの“誰しもが思いつくこと”は、できない理由があるか、あるいは試してみたがうまくいかなかったかのどちらかである場合がほとんどだからだ。


で、だ。

私なりに1つ解決策を思いついた。ちょっとだけ聞いてほしい。

「もっとポップアップを増やしてみる」というのはどうだろうか。

私が店頭に立っていると、店舗のスタッフから「人が足りていないから、こうやって店頭に立っていただけると助かるんですよね」と言われることがしばしばある。もちろん、どこまで本音で言っているのかは定かではないが、本当に人が少なくて困っているところも多いから、実際にそうなのかもしれない。

であれば、私みたいに作り手やブランドのスタッフが店頭に立つようなところにどんどんポップアップの依頼をするればよいのだ。顧客はより質の高い接客が受けられるし、ブランド側としては優良顧客を持っている百貨店で商品を販売できるし、販売員の接客対応は減るし、とまさに「三方よし」なのではないか、というのが私の考えである。

もちろん、ポップアップを企画したり、そもそもそういうブランドを探してくるところは大変だし、ポップアップ中のフォローも必要だ。ただ、接客の量と質を上げないと現状打破は難しい一方、そのための人員補強ができないのであれば、このように外から接客をできる人を引っ張ってくるのが一番効率がいいだろう。一度に複数ブランドのポップアップを同時並行で走らせれば、単純にブランド数だけ販売員が増える計算になる。そしてポップアップを開催したブランドの中からよく売れたものを常設にしていけば、顧客がそのブランドあるいは商品のリピーターになってくれる可能性も出てくる。


これはあくまでポッと出のアイディアなので、そう簡単に実現できるものではないことは重々承知しているが、少しだけでも検討していただけると嬉しい限り。

そして、çanomaは呼ばれればどこでも行ってポップアップします。私、どこでも行きます。


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