俺は主人公みたいだな
地下鉄の連絡通路
壁の模様は
パステルとモノトーンの異形だ
何かしらの素材を
そのままあしらったモニュメント
薄汚れた点字ブロック
無機質に我々を運ぶ鉄の箱
(ああ、なんだか
病院に居るみたいだ)
廃れた注意喚起や
変わり映えしない中吊りが
まるで自分の揶揄だと悟る頃
俺は目的地に吐き出される
抑揚の無いジブリみたいに
死んだ顔で歩く群れ
この感性ならゾンビ映画の監督は軽くやれる
と、不肖は皮肉めいた嗤いを携え
出口を目指す
(先のことを考える気力もなく、
ただ、虫の様にのそのそと向かう)
目指す等と、そんな仰々しくもないな
俺は受動的にここに居る
意志を通さない生理的な活動で
命を維持しているに過ぎない
(同じなんだ、
何かを悪く言える様な人間じゃない)
それでは生き物であるかすら
問われそうな思考で、
いいや思考さえ霞む反射で
残りのろうそくを燃やしている
(何を為すのか
何を成せるのか
自問や自答等はとうに
ボロボロの算数ドリルみたいだ
答えもわからないままに
いちばん後ろの答えを盗み見て
これでいいんだ
これでいいんだよなって
自分に言い聞かせている)
ただ、そのろうそくは
終わりが見えないのだ
いつ尽きるかもわからない火を
延々と灯し続けるのに
自分を奮い立たせる事は難儀で
疲れてしまったー
(ああ、燃えかすのようだ
このまま、惰性で生きていくのだろうか
だがなんだ、その炭のなかで
ぱちぱちと爆ぜる火種が居るじゃあないか
まだこんな希望みたいなものが
胸のうちに居たんだな)
これがもし映画なら
これは序章であろう
なんの変哲のない俺に
日常に辟易した燃えかすに
抱えきれないアポカリプスが訪れる
生にしがみつくことだけが
希望みたいな生きがいがやってくる
(まるで宝くじを買ったみたいな皮算用
化かされたタヌキを狩ってご満悦で
また日常に埋没するのだろう
しかしながらそれはどうか
時折聞こえるぱちぱちとした音色に
笑みを浮かべながら火を焚べる時が
やってくるだろう
看過していればこのまま穏やかに消える
しかしながら俺はー)
「それが許せなかった」
独り言を放ち階段を駆け上がる
たいして運動もしていないから
息があがってしまった
いいや、『生き足掻いて』しまった
眩しい出口をくぐり、
序章みたいに始まる1日
もしもこれが、映画だったらー