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映画感想『ニュー・シネマ・パラダイス』
【ネタバレなし感想】
映画と愛の物語
どんなに小さな街の閉ざされた世界でも、
時の流れと共に街の様子も、人々の様子も、映画館の様子も、
少しずつゆっくりと変わっていく。
しかし、世界にはもっと広く、大きい、
想像もできないようなことがたくさんある。
大人になること
夢を追うこと
それは昔の自分や馴染みの環境との決別
しかし、その思い出と記憶は
自分の人生の大切な一部として残り続けていく
本当に観てよかった
記憶に残る一本。
【作品情報】
『ニュー・シネマ・パラダイス』(原題:Nuovo Cinema Paradiso)
(1989. イタリア・フランス合作, 124分)
上映開始: 1989/12/16
配給: エースピクチャーズ
監督: ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本: ジュゼッペ・トルナトーレ
キャスト: フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、サルヴァトーレ・カシオ、マルコ・レオナルディ、アニェーゼ・ナーノ
【解説】
シチリアの小さな村を舞台に、映写技師アルフレードと映画に魅了された少年サルヴァトーレ(愛称トト)の心温まる交流を描いた不朽の名作。映画監督として成功を収めたサルヴァトーレが、恩師アルフレードの訃報を受け、少年時代からの思い出を回想する形で物語が進行する。エンニオ・モリコーネの美しい音楽とともに、映画への愛情と郷愁が詰まった作品で、数々の賞を受賞した。
<受賞歴>
- 第62回アカデミー賞 外国語映画賞 受賞
- 第47回ゴールデングローブ賞 外国語映画賞 受賞
- 第42回カンヌ国際映画祭 審査員グランプリ 受賞
【あらすじ】
ローマ在住の映画監督サルヴァトーレ(ジャック・ペラン)は、故郷シチリアの村から恩師アルフレードの訃報を受け取る。彼は少年時代、映画館「パラダイス座」の映写技師アルフレード(フィリップ・ノワレ)と出会い、映画の魅力に取り憑かれていく。やがて青年となったサルヴァトーレは、恋や人生の葛藤を経験しながらも、アルフレードの助言を胸に村を離れ、映画監督としての道を歩み始める。アルフレードの死をきっかけに故郷へ戻ったサルヴァトーレは、彼からの最後の贈り物を受け取り、過ぎ去った日々の思い出と向き合うことになる。
【ネタバレあり感想】
(以下、ネタバレ注意)
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手で映写機を回しながら、
フィルムが燃えないように注意しながら、
街の人が入りきらない小さな映画館で、
キスシーンでさえポルノとされるような感性の中で、
主人公は映画に触れ、魅了されていく。
そんな小さな街でも、少しずつ時は流れる。
街の様子も、人々の様子も、映画館の様子も、
少しずつゆっくりと変わっていく。
でもそれは小さな街の、小さな世界の、小さな変化。
そこで起きる小さな変化以上の変化が、
世界の別の場所では起こっている。
そしてその街では想像できないような世界が広がっている。
主人公のトトが夢を叶えるためには、
この街を離れ、世界に出ていかなくてはいけない。
それをアルフレードが教えてくれた。
彼は目が見えなくなってしまったにもかかわらず、
世界の変化を直接目にすることができないにもかかわらず、
目が見えている人たちより多くのものが見えていた。
大人になること
世界を知ること
夢を追うこと
それは昔の自分や馴染みの環境との決別でもある。
約束の日、エレナはトトの前には現れなかった。
「愛する人を待つ」
これは映画の他の場面にもみられた。
アルフレードの話に出てきた男とエレナと親しくなる前のトトだ。
しかし彼らは、約束の日を目前に待つことをやめた。
彼らは「愛を終わらせないために」去ったのかもしれない。
待っている間は終わらない。
だから約束の日に現れなかったエレナをトトは忘れられない。
それは一生トトの心に残るものだった。結果的にそのせいで、
トトは女性との間で本当の愛を見つけられずに過ごした。
街を離れ、家族はもちろん、エレナとも、アルフレードとも会うことができなくなった。
しかし、そのおかげで、彼は大きな夢を掴むことができたのかもしれない。
そしてその夢を応援することが、アルフレード、エレナ、家族の愛であり、願いだったのかもしれない。
そしてそれが、アルフレードからトトに残されたフィルムが意味するものなんだと思う。
大人になること
世界を知ること
夢を追うこと
それは昔の自分や家族、育った環境、そして時に愛する人との決別となる。
しかし、その思い出と鮮やかな記憶は、
自分の人生の大切な一部として残り続けていく。
愛と夢の話だった。
でもこれは、愛によって、恋愛をあきらめて、夢を追いかけた話。
優しくて温まるけど、非常に切ない話でもある。
どちらも手に入れられる選択肢が彼らになかったことが、さらに切ない。
本当に観てよかった。記憶に残る一本。
完全版も観ないと。