仕事は速ければよい、というわけではなかった経験
普段はメーカーで何でも技術者として、研究開発から製品設計、技術営業にまで携わっています。お客様と触れ合う機会も多い中で、「思っていたのと違う!」と感じるシーンも……。今回は「仕事が速いと喜ばれる!」と思っていた私が、それだけではないと思った経験をお伝えします。
仕事ができる≒速い
世の中のビジネス書やネット記事を見渡すと、仕事ができる人は速いというフレーズが溢れています。もちろん、それは間違いではありません。仕事が速ければ、成果があがり、製品ができあがり、売上まで上がってしまいます。
しかし、スピードを出しすぎた車が危険なように、仕事でも速さを求めたことで逆効果になるケースもあるようです。
速い≒あまり考えられていない
技術者といえばクレーム対応も仕事の一つです。過去に「設置した製品が損傷した」という報告を受けて、原因究明のために客先へ出向いたことがありました。クレーム対応ではありますが、よくイメージされるような一方的に怒鳴られるとか、そういう類の話ではありません。ただし、継続的に大きな売り上げが見込まれる案件であるため、慎重な対応は必要でした。
現地を確認した上でお客様にヒアリングし、対応策を考えて改めて提案することになりました。実は訪れる前に、事前情報から想定される状況と対応策を一式整理しておいたのです。なるべく速い対応が望まれると判断した私は、帰路の電車の中で資料の体裁を整えて、社内の確認を取り、お客様へ提出しました。
すぐにお客様から電話があり、出てみると…「資料ありがとうございます。かなり速い対応でしたが、本当に検討されたんですか?」とのコメント。正直びっくりしながら、事前の準備のことを説明しました。もちろん最後には、「もう一度、社内でじっくり検討して回答します」との返答も付け加えてです。
この時得た教訓は「短い時間で作成された資料は、低品質に見える」です。いわれてみればその通りで、短時間で提出された側から見れば、少し軽んじられたように感じるのかもしれませんね。やっつけ仕事、と思われても仕方ないかもしれません。
後日改めて、「もう一度検討しましたが、これが最適でした」と提出した資料は無事に受け取ってもらえました。
仕事の正しいスピード感が大切
そんな経験もあってか、例え仕事が速く終わっていたとしても、提出する前に一旦立ち止まるクセをつけています。依頼を受けた日を確認し、依頼内容を再チェック。速すぎない期間が空いていれば提出、短いようであれば1日寝かせることもあります。おかげさまで、以降は同じようなコメントをいただくことはなくなりました。
速いのは社内だけにして、社外とやり取りする際には時間も意識することが大切かもしれませんね。少しでもあなたのお仕事の参考になれば光栄です。