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はい、どうじょ

姪っ子に関する話です。
弟の夫婦に子供が生まれて一年半が経ちます。

その姪っ子はぼちぼち言葉を話しだし、「パパ!」とか「ママ」とか、軽い挨拶ぐらいは喋るようになってきました。

弟夫婦は実家から離れた勤め先の社宅に住んでおり、あまり行く機会はありません。

しかし弟が最近妙な話をしたのです。

「そういえばこの間ゾッとした話があるんだよ」


弟のゾッとする話といえば、車を止めてスマホをいじっていたらドアの横に男が立っていた!

そしたらよく見ると友人だった。など、非常に退屈なオチがお決まりのパターンです。

今度もどうせどうでもいいお笑い話なんだろうと耳を傾けました。

「いや実は娘(僕からみて姪っ子)がさぁ、最近なんでも『はいどうじょ』って言ってそのへんにある物を手渡ししてくるんだよ」
ふむふむ、普通の話。

僕は退屈そうに相槌を打ちます。


「それがね…嫁さんにも『はいどうじょ』って物をあげたがるんだけど…」
少しこわばった表情になって前のめりになる弟。

「壁に向かってよく『はいどうじょ』ってやるんだよ。

しかもいつも同じ壁の部分に向かって!」

ほうほう…それは…ちょっとだけゾッとするかもしれない。
「まぁ今度来てみてよ。」

少し間が空いたのですが、

機会があって弟宅へお邪魔するタイミングがありました。

その姪っ子の話なんてすっかり忘れていたので、特に姪っ子と接することもなくコーヒーを飲んでいると、

奥の部屋から姪っ子が現れました。

少しの間普通に弟と会話を続けていたのですが、ふいに姪っ子がテレビのリモコンを持ち上げて弟に「はいどうじょ!」と言ったのです。

この瞬間、以前弟が話していたことが急に思い出され、弟もいいタイミングだと思ったのかリモコンを娘に返して「ありがとう」と言いました。

するとトコトコこちらに歩いてきた姪っ子は僕に向かって「はいどうじょ」とリモコンを差し出します。

同じように僕も礼を言ってリモコンを返します。

すると満足そうな顔をして姪っ子は僕たちから離れ、
リビングの真っ白な壁に向かって「はいどうじょ」と確かに差し出したのです。

ん~どういうことなのだろう。

言葉の意味がまだ明確に分かっていないゆえの行動なのは間違いないとは思いますが…。

そこで弟がカマをかけることを提案して
「これおじちゃんに渡してきて」とリモコンを娘に手渡しました。
おじちゃんとは僕のことではありません。

この場合、第三者ということになります。

さすがにそれは‥と思ったも束の間、姪っ子は壁へ駆け寄ると
「はいどうじょ」とリモコンを差し出したのです。

あの壁にはなにかあるんでしょうか…。

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