新時代のブランドとは
2020年。新型コロナ感染症の影響により、ファッションブランドの在り方を再考する必要性が加速しました。
今日のファッション界では、ヴァージル・アブロー、エディ・スリマンなど、作品より製作者側への興味が高まっています。(ブランドよりデザイナーへの注目が優る)
音楽でもアーティストが自身を売り出すビジネスモデルにシフトしています。
カニエ・ウエストやビリーアイリッシュなどは自己プロデュースが上手く、SNSの勢いが加速する中、ビジネスモデルもそれらに適応している様です。
ファッションや音楽を通し、主軸となるコンテンツに関連するものが付加価値を高めている傾向があるように感じます。
自分は音楽媒体の様式に興味があります。彼らは映像や写真、特典からイベントまで多彩なコンテンツを混ぜ合わせています。
近年ではストリーミングが主流になりシングルとしてのリリースが増加、コラボやタイアップがし易くなっているのでは無いでしょうか。
ファッションブランドでは見られない一面です。
自分は、服のみで完結させるのは困難だろうと考え、ドローイングや映像その他のコンテンツを展開する事で、より世界観を伝え易く、さらには服への付加価値を付けたいと考えています。
これは音楽のリリース形態から影響を受けたものです。彼らは実に多様な展開をしファンを楽しませています。
元はといえば、私が1番好きなコレクションに大きく影響を受けています。
yeezy season 3 の発表です。
これはカニエ・ウエストのアルバムThe Life Of Pabloの初披露とyeezyの新作を同時に発表するというものでした。
自分はストリーミング配信で視聴していました。
大きなドームに米粒のようにびっしり人が入り、中央のステージらしき部分には何10メートルにも渡り布が被せられていました。カニエの合図で巨大な段幕が降ろされ、数100人ものモデルが姿を表しました。
音楽とファッションの同時発表。これ以上のエンターテイメントがあるのだろうかという気持ちで画面を観ていました。
あの気持ちを作りたくて服を作っています。
ファッションブランドは敷居が高く崇高な看板が命です。自分はこれがあまり好きではありません。他の業種にも上質で崇高なコンテンツは沢山みられますが、どれも熱意があります。私は熱を持ったものを作りたい。
最近、庵野秀明監督の密着インタビューを観ました。TVアニメで新世紀エヴァンゲリオンが放送されていた事、信じられません。旧劇場版の最後には実写映像のパートがあります。あれは、現実に帰れ、というアニメファンへのメッセージです。シン・エヴァンゲリオン劇場版にも実写映像や特撮の手法が用いられアニメーションとしての面白さを追求していました。
自分が作る物は所謂ファッション的なカッコ良さを目指していません。音楽や写真、アニメーションのクリエーター達に近いものです。既存のファッションブランドという枠組みを壊し、他ジャンルのコンテンツを取り入れ、服単体での面白さ、コレクションの取り組みの面白さを追求したいと考えています。結局は自分が面白い物を見たくて仕方が無いのです。
佐土原 雄介