旧会社を解散しました。
つい最近新しい会社を設立しましたが、ほぼ同時に古い会社を解散してようやく清算結了が終わりました。会社は設立するよりも解散するほうが大変です。
社長をやっていると会社は本当に自分の子供のような存在です。不出来な親のせいで我が子があまり輝くこと無く亡くなってしまった事に純粋に悲しい気持ちになり反省をしています。
亡くなった子の弔いとして僕は何をしてきて、何を失敗したのかを書いてみようと思います。(次回は新しい会社への決意表明的なものにしようかなと。)
どんなプロダクトを作ったのか
もともとは交通費精算をほぼ全自動でするためのアプリを作っていましたが、コロナ禍ということもあり、交通費精算業務自体が社会で行われなくなったので、Time Insightsという別製品を2020年11月に開発スタートしました。
僕が事業撤退を判断した2022年3月には以下のような製品になっていました。
ユーザーはカレンダーを連携させると、自分と自分の部下の時間の使い方を分析してくれるもので、これを使ってチームのタイムマネジメント力を育成できるというものでした。
なぜ失敗したのか
スタートアップである我々が最もアピールすべき「顧客」と「投資家」にほとんど会わずに開発を進めていました。内部の変化により、散々ピボットして製品が出来上がった後に投資家に見せた時の反応はかなり辛いものでした。「なんでこれが絶対必要なんですか?」といったファンダメンタルな問に対して僕も解がありませんでした。
タイムマネジメントを売り物に出来るほど知識やノウハウを持っていませんでしたし、そもそもタイムマネジメントはあくまでも成果を出すための副次的な手段、もしくはスキルでしかないので「成果」とかなり遠いものでした。その上に分析結果は一見キレイに見えるのですが、これを見たユーザーが具体的に何をすればよいのか・・・ という最も重要なものが欠けていました。
僕はもっともっとプロダクトのあるべき姿や、ヒト、金、時間といったリソース配分に対して主体的に真剣に考えるべきでした。嫌な匂いがする分岐点が姿を表した時は率先して組織をリードするべきでした。プロダクトの客観的な評価を聞いて絶望した時には資金はとっくにショートしていましたし巻き返しができる体制じゃない判断したので事業撤退しました。全責任を背負っているCEOとして完全に失格です。
きついピボットと支出を繰り返して資源圧迫
Time Insightsはかなりきついピボットを繰り返しています。最初はコンシューマー向けにモバイルアプリとして提供するためにモバイルに適した画面で開発しました。新入りのエンジニアを育てながらだったので6ヶ月程度かかりました。
デスクトップにピボット
しかし途中で、デスクトップユーザーの為に開発するべきという判断になり、デスクトップ用のデザイン作成から再構築をしました。これに3ヶ月ほどかかりました。モバイルアプリは誰にも使われること無くディスコンになりました。
ビジネスにピボット
更にその後に顧客のターゲットを個人ではなく、法人に変えるという判断になりました。個人用とビジネス用では要件の複雑さがまるで違います。ユーザー管理、権限管理、アクセス管理、請求管理などの複雑な要件が一気に加わりました。結局この変更には半年ぐらい要する事になります。
リーガルの支出
商標や、特許などでも数百万円使っていたのもキャッシュ的にはきつかった記憶があります。自己資金のスタートアップにとって圧倒的に足りないのは資金なので、プロダクトが確立していない状態で本当に知財にお金を使うべきだったのか今でも正解がわかりません。結果論ですが、盗むものが何もない貧乏人の家にわざわざお金かけて警備した事になってしまいました。
どうやって作ったのか
システムの裏側の仕組みはこんな感じで作りました。(最後のアーキ図があるのがこれ。マイクロサービスアーキテクチャ好きです)
「ユーザ一人あたりのアクセスは少ないけど、所有するデータの量が多い」というのが特徴だったと思います。一社あたりのデータの量が数十GB単位で多く存在して、集計時だけにバースト的に書き込み負荷がかかるという性質があり、その集計はいつ行われるのか予測できません。読み込み負荷は比較的かなり軽めです。
一方でお金はあまり無いのでサーバー料金はケチるモチベーション高めです。
軽い処理は、基本的にはサーバーレスのサービスを中心に構築されています。大きく負荷のかかるデータ処理もSparkクラスターを一時的に立ち上げて終わったら落とすようにしているので固定費になりづらいように考慮しています。
定期的に分析結果のデータの書き込みが大量に発生するので、FireStoreなどのサーバレスDBはコストがかさみ過ぎたためにPostgreSQLにして、ゆーっくり時間をかけて書き込む方式を取りました。(毎日1時間ぐらい) 過去に書いていたのでリンク貼っておきます。これを思いついた時はすごく嬉しかったです。
結果サーバーコストはかなり抑えられているがユーザーの体感速度は犠牲にならない様になりました。
最後に
弔いとして経営陣の無能さをさらけ出して見ました。最終的に振り返ってみると大変な迷走をした辛い時間だったような気もしますが、人に役に立つと思って頑張ってプロダクトを仲間と作った時間や、最初の契約が取れた時の喜びは何にも代えがたいものだと思います。
この経験を通じて知り合えた優秀な仲間、爆速で成長して他社に難なく転職できた未経験エンジニアと、強くなった自分自身は残ったので、あまり迷うこと無くやりたかった次の事業を始める決意をしました。次回はそれについて書こうと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?