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人手不足は嘘!?頭数は十分足りてる??足りないのは別のアレ

はじめに

近年、多くの企業で「人手不足」が課題として取り上げられています。しかし、実際のところ従業員数(頭数)が十分に確保されているにもかかわらず、「人手不足」に陥っているように見えるケースも存在します。本レポートでは、何が本質的に不足しているのかを明確化し、「人手不足は嘘 頭数は十分足りてる 足りないのは教育と向上心」という視点から問題を掘り下げます。

1. “人手不足”の実態を示すデータ

1.1 有効求人倍率と実質的な人員稼働率

  • 有効求人倍率の上昇
    厚生労働省の「一般職業紹介状況(2023年1月)」によると、有効求人倍率は1.35倍を記録しています。これは求人全体が増えていることを示す一方で、「人材が足りない」と考える企業が少なくない現状を映しています。
    しかし、総務省「労働力調査(2022年通年)」では、実際の労働人口(15歳以上就業者数)が微増傾向を示している事実も同時に示されています。つまり、世の中全体の就業者数はさほど減っていないにもかかわらず、「人手不足」が声高に叫ばれているのです。

  • 実質的な人員稼働率の低さ
    一部の企業では従業員数自体は十分確保しているにもかかわらず、社員一人ひとりの生産性が低いために「仕事が回らない」という現象が起きています。中小企業庁「中小企業実態基本調査(2022年)」によれば、多くの中小企業が「既存社員の能力活用・人材育成が十分に行われていない」と回答しているとの報告があります。

ポイント

  • 人手不足は必ずしも“頭数”そのものの欠乏だけを意味しない

  • 社員の稼働率や生産性が低く、「十分に活かせていない」状態を招いている可能性がある


2. 足りていないのは「教育」と「向上心」

2.1 教育投資不足が生む生産性の停滞

  • 教育投資の現状
    経済産業省が公表した「企業活動基本調査(2022年版)」によれば、人材教育に十分な予算を割いている企業は全体の30%程度にとどまり、多くの企業が「教育にかける費用対効果が不透明」という理由で投資を後回しにしがちであると報告されています。
    しかし同調査は、教育投資が高い企業ほど付加価値生産性(従業員1人あたりの生産額)が高い傾向を示すことを指摘しており、教育不足が企業全体の成果に影響を及ぼしている可能性は高いと考えられます。

  • 新人研修や継続研修の不足
    厚生労働省「能力開発基本調査(2021年)」では、企業が実施する新人研修や継続研修の時間数が過去10年で大きく減少していることが示されています。特に中小企業では「業務が忙しくて研修に割く時間がない」といった事情もあるようですが、その結果として社員が業務スキルを十分に習得できず、生産性が伸び悩む状況につながっているとみられます。

2.2 社員の向上心不足

  • 自己啓発の低迷
    経済産業省の「働き方改革に関する調査(2022年)」によると、20~30代の若手社員の約40%が「自己啓発にあまり積極的ではない」傾向にあるとのデータがあります。学習意欲が低下する背景には、評価制度やキャリアパスの不透明感があると推測されていますが、これは企業の教育制度と社員の向上心の両方に課題があるといえるでしょう。
    まさに、**「人手不足は嘘 頭数は十分足りてる 足りてないのは教育と向上心」**と指摘される所以です。

  • モチベーションを高める仕組みの欠如
    帝国データバンク「人事戦略に関する調査(2022年)」では、多くの企業が「社員のモチベーション管理は個人の問題」と捉えており、組織としての取り組みが十分ではないと分析しています。研修制度を整備しても受講者本人がやる気を持たなければ成果は出にくいことから、企業としてもモチベーションを高める方策(目標管理制度の再構築、適切なフィードバック機会の増設など)を検討する必要があります。


3. マネジメント手法の再考が必要


YouTube「人手不足は嘘」のスクリーンショット

3.1 上司のリーダーシップと部下育成

企業内での教育やモチベーション向上は、管理職のリーダーシップに大きく左右されます。

  • 明確な目標設定と評価基準の提示

  • 定期的な面談を通じたキャリア支援

  • OJTだけでなくOff-JT(社外研修や勉強会)の活用
    これらが適切に機能していない現場では、社員の成長が停滞しやすいとされています(中小企業庁「経営力向上に関する調査」2022年)。

3.2 組織カルチャーの見直し

教育投資や研修制度を形だけ充実させても、組織が“学び”を推奨しないカルチャーでは成果が出にくいでしょう。経済産業省の「未来人材ビジョン(2021年)」では、「学びを企業文化として定着させることが、持続的な成長の鍵」と明言されており、社員のチャレンジを歓迎し、失敗を許容する土壌づくりが重要だとしています。


4. まとめ

「人手不足」という言葉が頻出する昨今ですが、その内実は“頭数”の不足ではなく“教育”と“向上心”の不足**が根本的な要因であるケースが少なくありません。

  • 人手不足は嘘 頭数は十分足りてる 足りてないのは教育と向上心
    このフレーズが示すように、企業が本来注力すべきは、既存社員の能力開発とモチベーションを高めるための仕組みづくりです。

今後の展望

  1. 教育投資の強化

    • 新人研修から継続研修まで、一貫した育成プログラムを整備する

    • 外部研修やオンライン学習を活用し、スキルアップを促進する

  2. 社員の向上心を引き出す施策

    • キャリアパスの明確化と公正な評価制度

    • 自発的学習を後押しするための報酬や表彰制度

  3. マネジメント手法のアップデート

    • 管理職が主体的にコミュニケーションを取り、フィードバックを強化する

    • 組織全体で“学習”を重視するカルチャーを醸成する

これらの方策を採り入れることで、“人手不足”だと思われていた問題を解消し、既存の社員を最大限に活かす道が開かれるはずです。企業が持続的に成長していくためにも、今こそ教育と向上心に注目し、適切な投資を行うことが求められます。


主な参考データ

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況」2023年1月分

  • 総務省「労働力調査」2022年通年

  • 中小企業庁「中小企業実態基本調査」2022年

  • 経済産業省「企業活動基本調査」2022年版

  • 厚生労働省「能力開発基本調査」2021年

  • 帝国データバンク「人事戦略に関する調査」2022年

  • 経済産業省「未来人材ビジョン」2021年

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南部湧祐
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