9人が立候補した自民党総裁選の持つ意味は何か

本日、9月27日(金)に投開票される自由民主党の総裁選挙が告示されました。

立候補したのは、届け出順に高市早苗、小林鷹之、林芳正、小泉進次郎、上川陽子、加藤勝信、河野太郎、石破茂、茂木敏充の各氏です。

9人が立候補するのは、自民党の総裁選が立候補制となった1972年以来では最多です。

自由投票制であった1956年4月5日の総裁選挙では11人が1票以上を獲得したものの、現在とは制度が異なることを考えれば、現職である岸田文雄総裁の出馬辞退によって多くの野心家と立候補しなければ自らの政治的な立場を危うくする人たちの出馬を促したと言えるでしょう。

現時点で第1回投票において過半数を制する候補者が見当たらないことから決選投票となる見込みです。

ここで注目すべきは、誰が決選投票に残るかという点だけでなく、推薦人の20人を下回る得票で敗退する候補者がいるか否かという点です。

推薦人は自民党所属の国会議員であるものの、投票は無記名式です。

そのため、推薦人には名前を貸したが、実際には別の候補者に投票するということも可能になります。

従って、20票を下回る候補者の今後の政治活動と党内での立場にも影響を与えるだけに、各候補の得票数も注目されます。

これに加えて、候補者が9人と異例の多さになったことは、第一に20人の推薦人を集められるだけの人物がいることを、第二に自民党が9人の国会議員がそれぞれ20人の推薦人を集めることを可能にするだけの規模を有していることを、そして第三に解散したか否かを含め同一の派閥から複数の候補者が出馬することで派閥単位での総裁選から決別したことを党内外に示す役割を担っていることも見逃せません。

特に第三の点に関しては、旧岸田派から林芳正官房長官と上川陽子外務大臣、茂木派から茂木敏充幹事長と加藤勝信元官房長官が立候補したことは、従来の1つの派閥から立候補するのは1人であるという原則からすれば異質の現象となります。

何より、1956年12月の総裁選挙で石橋湛山が勝利を収めたことで有用性が認識されたのが自民党における派閥であり、総裁選での勝利を究極的な目的として発展してきたという経緯があります。

このような背景を考えれば、派閥を割るような行動が取られること自体が、これまでの自民党の派閥政治とは異なることを示しています。

その意味で、自民党が変わることを示す最も分かりやすいことは現職である自らが出馬しないことであるとして総裁選を辞退した岸田文雄首相の目論見は、現時点で効果を収めていると言えるでしょう。

それだけに、これまで以上に注目を集めている自民党総裁選が、国民の期待を裏切らずに清新で有能な総裁を選べるか、今後の動向が注視されます。

<Executive Summary>
What Are Important Viewpoints to Understand the Meaning of the LDP Presidential Election? (Yusuke Suzumura)

The Liberal Democratic Party notifies the Presidential Election and nine candidates run for the election on 12th September 2024. On this occasion, we examine the meaning of the election.

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