「三派閥の解消」は自民党の派閥問題を解決するか
昨年表面化した自民党の派閥の政治資金問題は、岸田派、安倍派、二階派が解散を表明するという事態に発展しています。
自民党の党内政治の基礎単位であり、政権運営にとっても重要な役割を果たしている派閥が相次いで解散を表明するのは異例です。
もちろん、岸田文雄首相が岸田派の解散を表明した背景に、派閥の政治資金問題で他派の機先を制し、有利な状況で党内世論をまとめ上げようとする思惑があることは想像に難くありません。
また、今年9月に予定されている自民党総裁選では、現行の制度に変更がなければ20人の推薦人が必要であり、「派閥」という名称と組織がなくなったとしても、これまで派閥が担ってきた総裁選の基礎単位という役割そのものが雲散霧消するわけではありません。
むしろ、来る総裁選を経て解散した派閥が終結するということは容易に予想されますし、名前と形を変えて「派閥」に類する組織が新たに誕生するとしても不思議ではありません。
実際、政治資金問題が発覚していない茂木派や麻生派は派閥を存続させる意向であり[1]、党内でも派閥そのものの解消に消極的、もしくは否定的な意見が根強いことが分かります。
特に麻生派については、岸田首相が率いてきた宏池会から分派したという背景があり、両派の合流による「大宏池会」の構想は自民党の派閥問題を考える際の重要な問題点の一つでした。
従って、今後実際に岸田派が解散したとして、総裁選後ないし適切な時期に岸田派に所属していた議員が再び集まるとき、その母体となるのが麻生派であり、「大宏池会」が実現する可能性は皆無ではないと言えるでしょう。
もしそうなれば、派閥の解散を宣言することで党内の議論を先導するとともに派閥問題に意欲的である姿勢を示し、さらに宏池会関係者にとって様々な問題を含みつつも念願であった「大宏池会」を実現するという意味で、岸田首相は自民党の歴史に残る手腕を持った政治家ということになります。
それだけに、派閥問題を巡る今後の動向がどのようなものになるか注視されます。
[1]麻生氏、派閥存続の意向. 日本経済新聞, 2023年1月21日朝刊5面.
<Executive Summary>
Are Dissolutions of Three Factions of the LDP's a Solution of the Faction Problems? (Yusuke Suzumura)
Prime Minister Fumio Kishida declares the dissolution of the Kishida Faction and other two factions, the Abe Faction and the Nikai Faction, say the same plan. It seems an important turning point for the Liberal Democrati Party's intnar-party politics. At the same time, however, it is a kind of fake attitude to avoid public blame. In this meaning we have to pay our attention carefuly to examine the changes of the problem.
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