「都知事選への実績作り」を超える東京都の「第2子の保育料無償政策」

昨日、東京都は2023年10月から0-2歳の第2子の保育料について、所得制限を設けることなく、しかも第1子の年齢にかかわらず完全無償化する方針を公表しました[1]。

都はすでに18歳以下に所得制限を設けず月額5000円を給付する方針を示しており、来年度予算案に経費を計上しました。

こうした一連の措置は、記者会見の中で小池百合子都知事が強調した「東京から少子化を止める。大胆な施策を実行していく」[1]という姿勢を政策面で保証するものです。

今回、東京都がこれまで以上に財政面で踏み込んだ少子化対策を行うのは、一面において2024年の都知事選に向けた小池氏の実績作りという性格を持つことは否みがたいところです。

それとともに、他面においては新型コロナウイルス感染症の感染拡大後に東京都の人口が他地域への転出超過となったことも、積極的な少子化対策を行う動機となっていることを推察させます。

すなわち、転出した人口は遠方に移動するのではなく、神奈川、埼玉、千葉といった隣県に転出する事例が多く、首都圏全体としては人口の大幅な変動はないものの、東京都としては子育てや保育、妊娠だけでなく、教育、児童福祉などを含む子ども関連の事業を総合的に支援しなければ都にとって大きな強みの一つである豊かな人口を今後も安定して維持することが難しいという切迫した見通しがあったこと思われます。

一方、現在子どものいる家庭や今後出産を計画する人たちにとっては、子育てにかかる費用の負担が軽減されることは、金銭に関する懸念から次の子どもの出産を控えたり、さらには結婚そのものを断念する可能性を少しでも減らす契機となり得ます。

実際、どれほど所得が多いとしても子育てには様々な費用が必要となることに変わりはありません。従って、所得制限を設けずに支援を行うことは、子育てをする人たちの要望に沿うものであるとともに、少子化対策のためにあらゆる政策を動員するという東京都の強い意志を示す意味を持ちます。

もとより、今回の第2子の保育料の完全無償化によって保育園の利用への需要が高まることで保育士の数が不足したり、完全無償かという政策そのもの継続性が課題となるという点は見逃せませんし、今回の少子化対策の実効性に対する批判も生じることでしょう。

それでも、どのようにすればよりよい環境の下で子育てを行うことが出来るか、あるいはどうすれば東京都で子どもを産みたいと思えるか、という観点から考えれば、今回の措置は地方自治体の中で最も優れた財政力を持つ東京都だからこそ行える、先駆的な政策であることに間違いはありません。

それだけに、今後の都議会の審議において、都議各位が政策の趣旨を理解し、予算案を実現されることが期待されます。

[1]第2子の保育料無償. 日本経済新聞, 2023年1月13日朝刊4面.

<Executive Summary>
Tokyo's Policy Making Child Care Service Free for Second-Born Children May Have a Strong Impact to Countermeasures to the Falling Birthrate (Yusuke Suzumura)

Tokyo Governor Yuriko Koike says that the Tokyo Metropolitan Government is planning to make child care service free for second-born children in the Fiscal Year 2023. On this occasion we examine a meaning and impact of this policy to countermeasures to the falling birthrate.

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