「縦割り110番」で期待される河野国務相の文書保存への取り組み

昨日、河野太郎国務大臣が閣議後に記者会見を行い、官公庁の規制などに関する苦情や提案を募る「規制改革・行政改革ホットライン」、通称「縦割り110番」の内閣府の公式ウェブサイトに開設することを表明しました[1]。

河野国務相は9月17日(木)に自らの公式ウェブサイト上に「行政改革目安箱」を設置したものの情報や意見の送信が4000件を超えたため翌日には運用を停止したこともあり、「縦割り110番」は既存の「規制改革ホットライン」を改組する形で設けるとのことです[1]。

既設の窓口が内閣府にある中で自身の公式ウェブサイトに類似の窓口を新設したことは屋上屋を重ねるものであり、いかにも縦割り行政的もしくは縄張り争い的な措置でした。それだけに、窓口の一元化は現実的な対応と言えるでしょう。

それとともに、河野国務相には、もし「行政改革目安箱」を公務の一環で行ったのであれば、寄せられた情報や意見を行政文書として保存し、私人として情報を収集した場合であっても、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」[2]という公文書等の管理に関する法律の理念に則り、適切に保存することが期待されます。

内閣発足後の新閣僚の記者会見が深夜に及ぶことについて「前例主義、既得権、権威主義の最たるものだ」[3]と批判した河野国務相だけに、前例にとらわれず、行政文書や政治家が個人で収集する情報の適切な取り扱いの手本を示すことは、日頃の発言と行動の一致という点からも好ましいでしょう。

情報発信力が強いとされる河野国務相[4]だけに、記者会見の時間といった些事ではなく、大局的な観点からの行動が求められるところです。

[1]縦割り110番 内閣府HP内に. 朝日新聞, 2020年9月26日朝刊4面.
[2]公文書等の管理に関する法律. 第一条.
[3]未明まで続く就任会見「やめたら」. 朝日新聞, 2020年9月18日朝刊4面.
[4]菅内閣 発足. 読売新聞, 2020年9月17日朝刊1面.

<Executive Summary>
Will Minister Taro Kono Be Able to Demonstrate an Ability to Save Official Documents? (Yusuke Suzumura)

Minister Taro Kono says that a hotline for an administrative reform will be opened on the official website of the Cabinet Office on 25th September 2020. It might be remarkable opportunity for Minister Kono to demonstrate his ability to save official documents.

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