労使紛争解決後の大リーグが取り組むべき課題は何か
現地時間の3月10日(木)、大リーグ選手会(MLBPA)と大リーグ機構及び球団経営者は、新たな労使協定の締結に合意しました[1]。
今回の合意により、制度面での主な変更点は、以下の通りとなります。
また、今後の日程は次の様に予定されています。
今回の労使交渉の最大の焦点である贅沢税の最低課税基準額は、交渉当初に既存の金額から3000万ドルの減額を主張していた大リーグ機構・経営陣に対し、MLPBA側が5年間で2億3000万ドルから2億6300万ドルに引き上げることを要求していたため、両者の溝は埋めがたいものでした。
贅沢税に関する両者の合意の内容を見ると、基準額はMLBPAの主張が採用されるとともに、5年後の上限額は機構・経営陣が主張していた減額分に相当することが分かります。しかも、増額の段階はMLBPAの3段階に対し、機構・経営陣の唱えるである4段階が採用されました。
そのため、増額という点では機構・経営陣が譲歩し、増額の上限値と段階について選手会が譲歩した形になります。
急展開とも言うべき双方の合意の背景には機構が提示した国際ドラフト案の影響が大きく、かろうじて団結を維持していた選手会の中に国際ドラフトへの賛否を巡る対立が起き、最終的に選手会側が多数決により新協定の合意を決めるに至りました。
国際ドラフトそのものはマンフレッド・コミッショナーが2017年の来日時にも導入の意欲を示しており、機構としても調査中の事項でした。
そのため、実現まで時間がかかると思われてはいたものの、球界関係者にとっては既知の話題でした。
そうした国際ドラフトを労使交渉の駆け引きの材料として活用し、しかも、交渉妥結後には今後も継続して検討するということになったことからは、機構・経営陣の交渉のしたたかさの一端が窺われます。
一方で、交渉を紛糾させる一因であった各球団の経営情報のさらなる開示は、喫緊の課題として今後具体的な方策をとる必要があるでしょう。
いずれにせよ、さらなる開幕時期の延長や試合数の削減を免れることが出来た点は、人々の野球への関心を繋ぎ止めるという意味で評価できるものであり、関係者の尽力は実に重要なものです。
そして、今後の労使協定交渉では、球界の発展という大義に就き、どこまで小異を捨てられるかに、労使双方の一層の努力が求められるのです。
[1]Mark Feinsand, MLB, MLBPA agree to new CBA; season to start April 7. MLB.com, 11th March 2022, https://www.mlb.com/news/mlb-mlbpa-agree-to-cba (accessed on 12th March 2022).
<Executive Summary>
Labour Dispute Ended: What Is a Next Problem for the MLB? (Yusuke Suzumura)
Labour Dispute at the Major League Baseball ended on 10th March 2022. In this occasion we examine a next problem for the MLB to overcome and resolve.
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