バイロイト音楽祭2022

去る12月12日(月)から18日(日)まで、12月14日(水)を除く6日間にわたり、NHK FMで『バイロイト音楽祭2022』が放送されました。

今回は最初の4日間が『ニーベルングの指環』の各話を、12月17日(土)は歌劇『ローエングリン』と歌劇『さまよえるオランダ人』、そして12月18日は歌劇『タンホイザー』と楽劇『トリスタンとイゾルデ』を取り上げました。

過去2年のバイロイト音楽祭は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて公演の中止や規模の縮小を余儀なくされたものの、今回は『ニーベルングの指環』全4作が5年ぶりに新たな演出で上演されるなど、「ウィズ・コロナ」の世相に応じた開催となりました。

ただし、当初『ニーベルングの指環』を指揮する予定であったピエタリ・インキネンが新型コロナウイルス感染症に感染したため、開催10日前に『トリスタンとイゾルデ』を指揮するコルネリウス・マイスターが『ニーベルングの指環』を担当し、マイスターの代役をマルクス・ポシュナーが務めるなど、音楽祭が「コロナ禍」の影響から無関係ではないことも改めて示されました。

このような開幕直前の異動が上演に与えた影響が決して小さくなかったことは、例えば指揮者と演奏者との間の意思の疎通が必ずしも十分ではなかった点にも表れており、楽劇『神々のたそがれ』の終盤で管弦楽の集中力が途切れがちになったことなどは見逃せないところでした。

一方、今回の新演出が観客からは不評であったことは、楽劇『ラインの黄金』の第1幕が終わった時点で、拍手と同時に罵声が飛び、『神々のたそがれ』に至っては第1幕の終了時に拍手より先に大きな罵声がバイロイト祝祭歌劇場に響いた様子からもよく分かります。

それでも、楽劇『ジークフリート』においてジークフリートを務めたアンドレアス・シャーガーの輝かしい声は、聞き応えのあるものでしたし、『神々のたそがれ』ではクレイ・ヒリー(ジークフリート)とアルベルト・ドーメン(ハーゲン)、そして合唱の存在感の高さが際立っており、来年以降にバレンティン・シュワルツの演出を聴衆がどこまで受け入れられるかが興味深く思われた次第です。

また、『ニーベルングの指環』以外では、昨年にも増して存在感が高まったリーゼ・ダヴィッドセンのエリーザベトと、前奏曲から最後の一音までゆるがせにしなかったアクセル・コーバーの指揮も魅力ゆたかな『タンホイザー』や独唱陣の歌唱はもとより、特に低音域が充実した管弦楽が作品を一層聞き応えのある内容に仕上げた『さまよえるオランダ人』など、意義深い公演が揃った点も、印象的でした。

このように、3年ぶりに本格的な開催となった今回のバイロイト音楽祭は、今後の推移も含めて、例年以上に彩り豊かで、魅力に満ちた内容であったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of NHK FM's Programme "The Bayreuth Festival 2022" (Yusuke Suzumura)

The NHK FM broadcasted a featured programme "The Bayreuth Festival 2022" on 12th, 13th, 15th, 16th, 17th and 18th December 2022. In this time 8 works including the new production of "The Ring of the Nibelung" were performed.

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