NHK交響楽団第1982回定期公演
去る4月26日(水)及び27日(木)、NHK交響楽団の第1982回定期公演が行われ、本日のNHK FMの『N響演奏会』で第1日目の実況録音を鑑賞しました。
今回は、前半にシベリウスの交響曲第4番、後半にラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲とチャイコフスキーの幻想曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』が演奏されました。ピアノ独奏はマリー・アンジュ・グッチ、指揮はパーヴォ・ヤルヴィでした。
任意の一小節を聞くだけで誰の作品か分かるものの時にうつろな表情を見せるシベリウス、情感豊かで華やかさを絶えず振りまくラフマニノフ、そして劇的な展開が印象深いチャイコフスキーと、いずれも聞き応えのある作品が揃ったのがこの日の公演でした。
NHK響と初共演となったグッチは、ラフマニノフの持つきらめくような音楽は譜面に任せ、むしろその背後にある考え抜かれた作品の構造と多様な表情を見せる旋律の結びつきを丁寧に解きほぐす演奏を披露しました。
一見すると派手さに欠けるものの、一つひとつの音を丹念に弾き分けるところからも実力の高さがよく分かるグッチは、今後楽団にとって欠かすことのできない独奏者となることでしょう。
また、シベリウスとチャイコフスキーは、旋律を短めに切り上げることで音楽に推進力を与えることを得意とするヤルヴィの持ち味がよく示された演奏でした。
特に『フランチェスカ・ダ・リミニ』はチャイコフスキーに特有の濃密な終わり方を感傷的に描くのではなく、淡白と言えるほどの距離感で演奏することで、かえって作品の本となったダンテの『神曲』の重層的な性格をよく表現していました。
同様にシベリウスもしばしば調性が希薄になり、性格の定まりにくくなる作品に対し、譜面を隅々まで的確に把握することで最後まで聞き手の注意を惹きつけて逸らすことがない演奏に仕上げました。
この日の公演も、前回の第1981回定期公演と同様に楽団と指揮者の間柄の親密さがよく示されたひと時となりました。
<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1982nd Subscription Concert (Yusuke Suzumura)
The NHK Symphony Orchestra held the 1982nd Subscription Concert at the Suntory Hall on 26th and 27th April and broadcasted via the NHK FM on 6th May 2023. In this time they performed Sibelius' 4th Symphony, Rahkmaninov's Rhapsody on a Theme of Paganini, and Tchaikovsky's "Francesca da Rimini". Solo piano was Marie-Ange Nguci and conductor was Paavo Järvi.