衆院選の事前予測で自民党が劣勢に置かれているのは何故か

10月27日(日)に投開票が行われる第50回衆議院議員選挙まで、残すところあとわずかとなりました。

各種世論調査では自民党の過半数割れを予測する結果も出ています。

もちろん、前回2021年の総選挙も当初は自民党の劣勢が伝えられたものの、結果としては単独で絶対安定多数を確保しています。従って、事前の予想がどこまで正しいかは開票が終わるまで分からないのが実情です。

しかし、今回は派閥の政治資金パーティーを巡って公示直前に現職議員を公認せず、急遽代わりの候補者を擁立した選挙区も少なくありません。こうした選挙区では候補者の知名度の不足を補うことが難しく、自民党が劣勢になるのは当然と言えるでしょう。

また、自民党を公認されなかった候補者を当選後に追加公認すれば結果的に自民党が過半数を維持することも可能ではあろうものの、肝心の候補者が無所属で立候補するために資金面でも宣伝活動の点でも不利な状況に置かれており、比例区での復活当選もかなわない中で議席の維持が難しいであろう選挙区も散見されます。

もし、このまま現在の予想通り自民党が過半数を下回ることになれば、与党である公明党とあわせて過半数を維持できるか否か、もし出来ない場合は政策や人脈の点で類似する点の多い国民民主党や日本維新の会とのさらなる連立によって政権党の座を確保することになるのか否かという点に関心が集まります。

両党とも現時点では総選挙後の政権入りには否定的な態度を示しているものの、特に日本維新の会は与野党に是々非々で臨むという姿勢を強調しているだけに、連立政権が肯定されうるものであると判断されれば閣外協力の形であっても与党側に強調することになるでしょう。

ところで、何故自民党が今回のような劣勢を伝えられる状況に直面したかと言えば、政治資金問題を抱える議員たちの処遇だけでなく、総裁選の決選投票で対決した高市早苗前国務相の入閣や党の要職での起用に失敗し、旧安倍派からの閣僚の登用を行わないと言った石破茂首相の人事も少なからず影響しています。

石破首相にとっては、有権者の反発が強いとされる政治資金問題に関係する議員を起用しないことは国民の声に耳を傾けるという姿勢を示すための格好の手段となります。

一方、問題があるとされた議員を全て公認しないのではなく、問題となった金額などによって対応を分けたことは、明確な基準による判断のように思われるものの、例えばその金額の根拠がどこにあるかを明快に説明することは難しいものです。

その結果、一部の候補者だけを公認せず、大半は問題なく立候補できているという野党側の批判を招くことになってしまいました。

あるいは、旧安倍派の議員を入閣させなかったことは党内の最大の勢力であり、しかも高市氏を支援した議員たちに対決する姿勢を鮮明に示したことになります。

いわば党の半分を反主流派としたことで、党内運営を困難なものにする状況を石破首相自らが招いたことになるのです。

もし石破首相が政権の維持そのものを目指す政治家であれば、有権者に対して批判があれば選挙で投票しなければよく、それが最大の制裁であると宣言して問題に関係する議員も公認するとともに、高市氏を重要閣僚に据えて支持層の歓心を買うということも出来たでしょう。

しかしながら、石破首相はこうした手法を取りませんでした。

ここには、「自由で真実の自民党を実現する」と決選投票直前の演説で強調した石破首相のある種の理想主義もしくは国民の声に耳を傾け、その意を汲むという態度が現れていることが推察されます。

ただ、石破首相の対応と目指すところが有権者に十分に伝わっていない、あるいは適切に理解されていないことが、現在の劣勢に現れていることになります。

それだけに、残された選挙期間中に石破首相がどのような態度を示すのかは、投票の結果とともに大いに注目されるところです。

<Executive Summary>
Why Is the LDP on the Disadvantage Position in the General Election 2024? (Yusuke Suzumura)

The 50th General Election will be held on 27th October 2024 and it is said that the Liberal Democratic Party is on a disadvantage position. On this occasion, we examine the reason of such tendencies of the election.

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