「東京オリンピックの成功」を考える際に必要な「運営の成功」と「競技の成功」の観点

現在国陸競技場で開会式が行われており、東京オリンピックが本格的に開始となります。

開催都市である東京都では新型コロナウイルス感染症の感染が拡大するとともに緊急事態宣言が発令される中での大会の実施については、現在も賛否の意見が分かれているのは事実です。

ところで、しばしば言及される「大会の成功」については、「運営の成功」と「競技の成功」を分けて考えることが重要です。

「運営の成功」については、大会を招致する時点で「復興五輪」という適切さを欠く目的が掲げられ、その後は「コンパクト五輪」や「選手ファースト」、さらに「コロナに打ち勝つための団結の証拠」といった標語が生み出されるものの、いずれも実現に至らないか根拠の乏しいものばかりとなっているのは周知のとおりです。

また、大会エンブレムの盗作問題や新国立競技場の建設問題、招致に関する贈収賄の疑惑、さらに開閉会式の人事問題や大会組織委員会の問題などは、運営の面で遺漏や至らぬ点があることを示しており、現時点ではおよそ「成功」とは程遠いことを窺わせます。

一方、「競技の成功」に関してはどうでしょうか。

出場する選手がこれまでの練習の成果を遺憾なく発揮するとともに、不正薬物の使用などのドーピング問題が起きないこと、あるいは酷暑の下で競技が行われる場合は選手たちが健康に不調をきたさないことなどが「成功」の実現のための要諦となります。

このうち、ドーピングについては年々巧妙化が進む薬物などの使用をどのように検出するかは運営にもかかわる問題だけに、厳正な対応が求められます。

酷暑の下での競技も選手一人ひとりが行える対策に限界がありますから、こうした不適当な環境の下での競技を設定した関係各所の不見識が問われます。

その意味で、「競技の成功」は「運営の成功」と密接に結びついていることは明らかであるとともに、むしろ運営に拙劣な面があれば競技そのものに影響を与えかねないということが分かれば、われわれにとって後世に残すべき重要な教訓を得ることになると言えるでしょう。

いずれにせよ、今回の大会は開催の時期の妥当さも含め、オリンピックという競技大会のあり方を考える上で重要な検証と検討の対象です。

そして、「オリンピックとは何か」をわれわれが考えることができるなら、その意味は決して小さくないものとなるのです。

<Executive Summary>
What Is a Meaning of a "Success of the Tokyo Olympics"? (Yusuke Suzumura)

On 23rd July 2021, the Opening Ceremony of the Tokyo Olympics is ongoing at the Japan National Stadium. In this occasion we examine a meaning of a "success of the Tokyo Olympics".

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