NHK交響楽団第2009回定期公演
去る4月24日(水)と25日(木)にサントリーホールにおいてNHK交響楽団の第2009回定期公演が行われ、5月11日(土)に第1日目の実況録音がNHK FMで放送されました。
今回は全てシューマンの作品が取り上げられ、前半に歌劇『ゲノヴェーヴァ』 序曲とチェロ協奏曲が、後半に交響曲第2番が演奏されました。チェロ独奏はキアン・ソルターニ、指揮はクリストフ・エッシェンバッハでした。
この日の公演の最大の聞きどころはチェロ協奏曲で、ピアノ、ヴァイオリン、ホルンなどの妙味を際立たせる作品を手掛けてきた手腕が遺憾なく発揮された一曲を早熟の異才ともいうべきフォルターニが鮮やかに弾き切りました。
特に第3楽章のカデンツァは伴奏との位置関係が確かで、独奏がオーケストラの中に埋没せず、しかも伴奏がチェロに委縮することもない様子は、難曲ともいうべきこの作品の魅力を聞き手に深く刻み込むものでした。
また、交響曲は旋律を短めに取る演奏によって各声部の輪郭が明瞭に描き出されるとともに、曲想が頻繁に変わる第2楽章などもオーケストラ全体が表情の変化に戸惑うことなく対応することを可能にしました。
第4楽章はティンパニによって華々しく幕を下ろす作品であり、今回の演奏ではことさらティンパニの連打が強調されたことは、曲の特徴をよく踏まえたものでした。
それだけに、第1曲目の歌劇『ゲノヴェーヴァ』序曲がやや活力に乏しく、どちらかといえば塩気の薄い雰囲気であったことは、公演の冒頭を飾るという点で訴求力に欠けるものでした。
このあたりに、ひとつの公演の間合いの取り方の難しさの一端が窺われたと言えるかもしれません。
<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2009th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)
The NHK Symphony Orchestra held the 2009th Subscription Concert at the Suntory Hall on 24th and 25th April 2024 and the record of the first day was broadcast via NHK FM on 11th May 2024. In this time, they performed Schumann's Genoveva overture, Cello Concerto, and the 2nd Symphony. Solo cello was Kian Soltani and conductor was Christoph Eschenbach.