NHK交響楽団2020年11月東京芸術劇場公演で思った「2020年という人材発掘の年」
昨夜は、19時から21時10分まで、NHK FMでNHK交響楽団の2020年11月東京芸術劇場公演を聴取しました。
今回は原田慶太楼の指揮により、コリリアーノの『航海』、バーバーのヴァイオリン協奏曲、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が演奏されました。ヴァイオリン独奏は神尾真由子でした。
進境著しい原田慶太楼の簡潔で力強い作品の理解の妙はドヴォルザークの交響曲第9番によく表れており、神尾真由子の独奏によるバーバーも洗練された仕上がりでした。
コリリアーノの『航海』を含め、放送からも充実した演奏会となったことが推察されました。
ところで、新型コロナウイルス感染症の拡大により日本と外国の間の往来が規制されたことを受け、日本国内の職業楽団では本来招聘するはずであった外国人の音楽家が出演できないまま、演奏会が開催されているのは周知の通りです。
定期会員であることを含めて私にとって最も身近な職業楽団であるNHK響をみても、今年9月から従来の定期公演を中止し、NHKホール、サントリーホール、東京芸術劇場で毎月の公演を行うようになって以降、外国人の指揮者や独奏者の代わりに日本人の演奏家が起用されています。
その中には、すでに定期公演に出演した実績のある者や楽団と関わりのある者だけでなく、これまで共演の機会のなかった者や、本来であれば登場するまでに時期を要する者もいます。
前二者の出演はある意味で当然ながら、後二者は緊急の事態の結果としての、一種の抜擢であると言えます。
こうした状況はNHK響だけでなく他の楽団にも共通するだけに、後世の音楽史家は2020年を振り返り、「新たな人材が発掘され、登用された節目の年」と書き記すことになるかも知れないと思われるところです。
<Executive Summary>
What Is an Impact of the COVID-19 for the Japanese Professional Orchestras? (Yusuke Suzumura)
The NHK Symphony Orchestra held the November Concert at the Tokyo Metropolitan Theatre on 20th November 2020. In this occasion we examine an impact of the COVID-19 for the Japanese Professional Orchestras based on an aspect of the selection of the guest players.