長期政権への意欲を示した石破茂首相の年頭記者会見
本日、石破茂首相は訪問先の伊勢神宮で年頭の記者会見を行いました[1]。
会見の中で、石破首相は少数与党による政権運営に関連し、党派を超えた合意形成を図るために野党にも従来以上に責任を共有することを求めるとともに、年金制度改革について各党による建設的な議論を期待すると指摘しました。
また、与党についても比較第1党として自民党は公明党とともに国政を担う立場から、現在および次の世代の国民に対して責任を持つ責任与党でなければならない点を強調しました。
さらに、今年3月までに結論を出すとした企業・団体献金についても、政党や政治団体としての規律のあり方をどのように考え、その規律をどのように担保していくかを与野党の枠を超えて議論を深めたいと語り、選挙制度の在り方についてもSNSを使った選挙活動などについて、党派を超えた議論の必要性に言及しました。
ところで、一連の発言の中で注目すべきは、従来の主張である地方の活性化を自らの政治上の師と位置付ける田中角栄を引き合いに出しつつ強調したこと、さらに野党との連立への可能性に含みを持たせたことです。
すなわち、「『令和の日本列島改造』と位置づけ地方創生2.0」という発言は、農林族や国防族として知られる石破首相の根本にある、地方の活性化という長年の取り組みを反映しています。
しかも、周知のとおり「日本列島改造」は田中角栄が提唱した考えであり、日本列島の均衡ある発展によって国内から寒村や僻地をなくしたいという田中の強烈な意欲を象徴するものです。
その意味で、「令和の日本列島改造」は田中の遺志を引き継ぐものであるとともに、岸田文雄前首相が自らが所属する宏池会の先達であった大平正芳の田園都市構想を現代の状況に適応させた「デジタル田園投資構想」や「新しい資本主義」といった主張にも通じる姿勢です。
もちろん、「令和の日本列島改造」をどのように実現するのかという点は大きな問題であるとともに、田中角栄が「日本列島改造」を提唱して首相に就任した1972年7月当時に比べ、日本の経済力や国際社会での存在感の低下は否めません。
それでも、こうした独自色を打ち出したところに、石破首相の長期政権への意欲の一端が窺われるのであり、念頭にふさわしい気宇壮大な会見になったと言えるでしょう。
[1]石破内閣総理大臣年頭記者会見. 首相官邸, 2025年1月6日, https://www.kantei.go.jp/jp/103/statement/2025/0106kaiken.html (2025年1月6日閲覧).
<Executive Summary>
Prime Minister Shigeru Ishiba Expressed His Originality at the Press Conference of the Beginning of the Year 2025 (Yusuke Suzumura)
Prime Minister Shigeru Ishiba held the press conference at Ise Shrine on the occasion of the beginning of the year 2025 and emphasised to realise the plan for remodeling the Japanese archipelago in the Reiwa Period on 6th January 2025. It is an important comment by Prime Minister Ishiba to express his aim to maintain the cabinet as the long term administration.