アーロン・ジャッジ選手の年間61本塁打を讃える

現地時間の9月28日(水)にロジャース・センターで行われたニューヨーク・ヤンキース対トロント・ブルージェイズ戦において、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手が今季第61号本塁打を放ち、1961年にヤンキースのロジャー・マリスが達成したアメリカン・リーグの年間最多本塁打記録に並びました。

マリスが61本目の本塁打を放った際には、ベーブ・ルースが1927年に記録した大リーグ記録である60本塁打が更新されることを阻止しようと、当時のコミッショナーであったフォード・フリックが、1927年と1961年の試合数の違いを理由に「162試合制での記録」と注記を付したことは広く知られる通りです。

また、143試合目で53本塁打を放ったマリスが、フリックをはじめとする有形無形の圧迫に精神的な苦痛を感じ、円形脱毛症を発症し、キャメルを立て続けに吸うようになったことも、周囲の環境の厳しさを教えるものでした。

一方、第60号を記録してから7試合にわたって本塁打が出なかったことは、ジャッジ選手がアメリカの野球そのものを象徴するかのような存在であるルースと、球史に残る記録を樹立したマリスという2人の選手に並ぶ際の重圧 がどれほど大きいものかを示唆します。

しかし、マリスが61号本塁打を放ったときにはヤンキースタジアムに集まった2万3154人の観客がいささか当惑した感を隠せなかったのに比べ、敵地であるロジャース・センターの観客はリーグ記録に並んだジャッジ選手に惜しみない拍手を送りました。

こうした状況の変化は、マリスとジャッジ選手の置かれた立場の違いに大きく依存することは明らかです。

すなわち、ルースの自伝の実質的な執筆者であったフリックなど利害関係のある人たちが存命であり、ヤンキースが3つ目の球団となり、そして1960年まで40本以上の本塁打を放ったことのなかったマリスと、1998年にマリスの大リーグ最多本塁打記録がマーク・マグワイアとサミー・ソーサによって更新され、2013年にドラフト1巡目の追加で指名されて入団して以来ヤンキースの一員であり、大リーグ2年目には真の長距離打者の象徴である50本塁打以上を打つなど、両者のあり方の差が、61本を巡る反応に影響を与えたと言えるでしょう。

さらに、過去20年にわたる打撃や投球の技術の顕著な進歩によって各種の記録が更新されることで、記録そのものが「破られないこと」よりも「破られること」に価値が生じるという変化も、反応の違いに影響を与えていることが推察されます。

ヤンキースは、今季の公式戦をまだ6試合残しています。それだけに、ジャッジ選手がどこまで本塁打の記録を更新するのか、あるいは打率、本塁打、打点で首位のまま公式戦を終え、2012年以来10年ぶりの三冠王を達成するのかが注目されます。

<Executive Summary>
Celebrating Aaron Judge's 61st Home Run (Yusuke Suzumura)

Mr. Aaron Judge of the New York Yankees hit 61st home run of the 2022 season and tied Roger Maris for the American League record on 28th September 2022. On this occasion we examine a meaning of this record and differences of reactions of relatives and fans of the MLB.

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