【追悼文】アラン・ドロンさんについて思い出すいくつかのこと
本日、フランスの俳優アラン・ドロンさんが逝去しました。享年88歳でした。
17歳で海兵隊に志願してインドシナ戦線に従軍し、1954年に除隊した後に『女が事件にからむ時』(1957年)で映画に初出演すると、その後は数多くの作品に出演して注目を集め、1959年の『太陽がいっぱい』と1960年の『若者のすべて』で人気俳優の座を不動のものとしたことは広く知られる通りです。
これ以降も様々な作品に出演する一方、1964年にプロダクションを設立したり1978年にブランド品を扱うアラン・ドロン・ディフュージョンを設立したりして実業家としても成功を収め、1981年の映画『危険なささやき』で監督も務めるなど、文字通りフランスを代表する存在の一人として多方面で活躍しました。
翳のある美貌が世界中の観客を魅了したことは周知のことながら、ルネ・クレマンやミケランジェロ・アントニオーニら、映画史に名を残す名監督の作品に出演するだけの実力を備えていたことも事実で、単なる美男の俳優で終わらず中年期以降にサスペンス映画やギャング映画でも重要な役どころを演じる幅の広さがあったからこそ、長年にわたり映画界の第一線で活躍できたのでした。
ところで、私も『太陽がいっぱい』のほか、『山猫』(1963年)、『サムライ』(1967年)、『さらば友よ』(1968年)、『アラン・ドロンのゾロ』(1975年)、あるいは『カサノヴァの恋』(1992年)など、アラン・ドロンさんの作品に親しんできました。
特に凡庸な総督と怪傑ゾロの違いの大きさが印象深く、アラン・ドロンさんの優雅な身のこなしのゾロが魅力的な『アラン・ドロンのゾロ』や、チャールズ・ブロンソンの重厚さに彩られる形でアラン・ドロンさんの繊細で陰影の濃い『さらば友よ』などは、私にとってひときわ思い出深い作品です。
野沢那智さんの声とともにその姿が思い出されることも含め、アラン・ドロンさんは戦後のフランスの映画界を象徴する偉大な存在でした。
改めてそのご冥福をお祈り申し上げます。
<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr Alain Delon (Yusuke Suzumura)
Mr Alain Delon, a French actor, had passed away at the age of 88 on 18th August 2024. On this occasion, I remember miscellaneous memories of Mr Delon.