【追悼文】谷川俊太郎さんについて思い出すいくつかのこと
去る11月13日(水)、詩人の谷川俊太郎さんが逝去しました。享年92歳でした。
谷川さんが詩人として一家をなすとともに国際的な名声を博すだけでなく、翻訳家、作詞家、あるいは映画監督として多岐にわたる活動を行われたことは周知の通りです。
その様な谷川さんの作品を初めて知ったのは、翻訳を手掛けられた絵本『スイミー』(好学社、1969年)で、私のかかりつけ医であった中野小児科の待合室で手に取ったのが最初でした。
その後は『鉄腕アトム』や『ビッグX』などのテレビアニメの主題歌を通して耳からその作品に親しんだものです。
耳から馴染むといえば、谷川さんの詩は黙読するとひどく技巧的で難解に思われるものの、音読すると軽やかであるばかりでなく、容易に情景を思い浮かべられるように感じられるという特徴があるというのが私の素朴な理解です。
これは、谷川さんが表現のために言葉を用いるのではなく、言葉を通して自らの目指すところを表現するという創作者の一つの姿に徹していたためではないかと思われるところです。
ところで、谷川さんは創作活動以外の分野でも私にとって身近に感じられる方でした。
すなわち、谷川さんは私が卒業した法政大学文学部哲学科の教授であった谷川徹三元総長の令息であり、都立豊多摩高等学校の卒業生でもありました。
いずれも、私にとってのみの親しみではあったとはいえ、こうしたことは、ささやかな喜びをもたらすものであったことに間違いはありません。
改めて、谷川俊太郎さんのご冥福をお祈り申し上げます。
<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr Shuntaro Tanikawa (Yusuke Suzumura)
Mr Shuntaro Tanikawa, a poet, had passed away at the age of 92 on 13th November 2024. On this occasion, I remember miscellaneous memories of Mr Tanikawa.