『クラシック音楽館』の3回の特集「ベートーヴェン特集」について思ったいくつかのこと
12月6日(日)、NHK教育テレビの『クラシック音楽館』の特別企画「ベートーベン特集」が3回の放送を終えました。
各回の内容を振り返ると、「ベートーベン特集」が司会の稲垣吾郎さんあっての企画であったことが分かります[1]。
例えば、第1回目の放送で解説役として登場したのは、指揮者の広上淳一さんでした。
広上さんは豊かな個性を持つ方だけにどのようなやり取りが行われるか注目していたところ、交響曲における第2楽章の持つ意味をチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を示しながら検討するなど、稲垣さんは聞き役に留まらず、時に広上さんと意見を交わし、存在感を発揮しました。
番組が始まるまで稲垣吾郎さんが存在感を発揮できないのではないかと懸念していたものの、実際には稲垣さんが広上さんを包み込むようなしなやかさと広上さんの話に的確に応じる感覚の鋭敏さで、番組を解説者の説明を聞くだけという形式を超える、印象的な仕上がりとしていました。
広上さんとの対比でいえば稲垣さんはどのような色でも受け入れられる無地の画布のような存在で、こうした懐の深さが第2回目の謹直な高関健さんとの真摯な対話、さらに第3回目の広上さんとの活発なやり取りにもつながったのだと思うところです。
このように、広上さんと高関さんの魅力を十分に引き出せたのは、稲垣さんの優れた手腕でした。
そして、第1回の放送の最期に「番組を通してベートーヴェンの音楽をより多くの人に知ってもらえたら嬉しい」という稲垣さんの願いは、3回の放送を通じて視聴者に確実に届いたことでしょう。
[1]鈴村裕輔, 司会に人を得て節目の年にふさわしい企画となった『クラシック音楽館』の「ベートーベン特集」. 2020年12月7日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/306cd9d3a7c4f467926f9bf335b90fec?frame_id=435622 (2020年12月8日閲覧).
<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Mr. Goro Inagaki through "Classical Music Hall" (Yusuke Suzumura)
A TV programme Classical Music Hall broadcasted by NHK Educational was hosted by Mr. Goro Inagaki who interviewed with Mr. Junichi Hirokami and Mr. Ken Takaseki in three times. In this occasion I remember miscellaneous impressions of Mr. Inagaki and the programme.
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