スタインブレナー家の変化を告げるレイズ救済
去る11月19日(火)、日刊ゲンダイの2024年11月20日号23面に連載「メジャーリーグ通信」の第176回「スタインブレナー家の変化を告げるレイズ救済」が掲載されました[1]。
今回は、ハリケーン・ミルトンの被害を受けて本拠地トロピカーナ・フィールドが使用できなくなったタンパベイ・レイズに対して傘下のマイナー球団の本拠地の提供を申し出たニューヨーク・ヤンキースの姿から、球団を保有するスタインブレナー家の態度の変化を検討しています。
本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。
スタインブレナー家の変化を告げるレイズ救済
鈴村裕輔
米国の気象史上過去5番目に大きな勢力であり、フロリダ州に上陸したハリケーン・ミルトンは、レイズの本拠地トロピカーナ・フィールドにも大きな被害を与えた。
屋根が大破し、折れ曲がった鉄骨がむき出しになった様子は世界中に配信され、その損害の大きさを印象付けた。
復旧には5570万ドルがかかり、しかも2025年のシーズン中には工事が終了しない見通しとなった。そのため、レイズは早急に代替球場を探し出す必要があった。
そのような中で手を差し伸べたのがヤンキースで、レイズは2025年をジョージ・M・スタインブレナー・フィールドで開催することになった。
タンパ・ターポンズとフロリダ・コンプレックスリーグ・ヤンキースというヤンキースのA級とルーキークラスの2級団が本拠地とするのがスタインブレナー・フィールドである。
ヤンキースがスプリング・トレーニングのエキシビション・ゲームで使用するということもあり、マイナー・リーグA級の球団の本拠地としては例外的に規模の大きい11,000人である。
今季の1試合平均の観客動員数が16,515人であったレイズが、声明の中で「タンパ地区において大リーグの試合を行うのに最も適している」と指摘したのも当然といえよう。
今回の措置は、1966年にガルフ・コーストリーグ・ヤンキースを創設して以来タンパとの関わりを密接にしてきたヤンキースが本拠地を一時的に失ったレイズの窮状を救ったことになる。
だが、2010年に没し、球場名にその名を残す先代オーナーのジョージ・スタインブレナーの時代を考えれば、ヤンキースがレイズに友好的な態度を示すことは隔世の感がある。
何故なら、スタインブレナーはヤンキースの縄張りと考えていたタンパにメジャー・リーグ球団が本拠を構えることを喜ばず、ことあるごとに敵愾心を示していたからだ。
1973年にヤンキースを買収して以降、球界の頂点に立つためであればフリー・エージェントとなった有力選手と積極的に契約を結び、ビリー・マーチンを5回にわたり監督に据え、5度解任するなど、あらゆる手段を用いたのがスタインブレナーだった。そこには、ヤンキースこそが人生の全てであるというスタインブレナーの強い意志が表れていた。
しかし、息子である現任のハル・スタインブレナーにとって、ヤンキースを所有することは人生そのものではなく、事業のひとつでしかない。
今や大リーグで最古参の球団所有者となったスタインブレナー家にも、着実に変化が起きているのである。
[1]鈴村裕輔, スタインブレナー家の変化を告げるレイズ救済. 日刊ゲンダイ, 2024年11月20日号23面.
<Executive Summary>
The Steinbrenner Family Changed, the Rays Is Helped (Yusuke Suzumura)
My article titled "The Steinbrenner Family Changed, the Rays Is Helped" was run at The Nikkan Gendai on 20th November 2024. Today I introduce the article to the readers of this weblog.