第二次トランプ政権はいかなる特徴を持つか

現地時間の1月20日(月)、米国のドナルド・トランプ氏が第47代大統領に就任しました。

2017年から2021年までの第一次政権時代は米国第一主義を掲げて外交や通商を進め、同盟国に米国の駐留経費の負担の追加を求める姿勢を示したり、環太平洋経済協力協定や気候変動抑制に関するパリ協定から離脱したりと、独自の政策を行いました。

特に友好的な関係を築こうとした中国や北朝鮮については、途中から対中強硬の姿勢に変化し、現職の米国大統領として初めて訪朝しながら、非核化で具体的な進展がなかったなど、米国第一主義に基づく外交が必ずしも成果に結びつかなかったのが実情です。

一方で自由貿易への懐疑的な姿勢が中国による自由貿易の強調という逆説的な結果をもたらしました。

また、今回、就任直後に世界保健機関(WHO)から脱退すると表明し、大統領令に署名したこと[1]は、2020年1月に新型コロナウイルス感染症が発生し、その対策に第一次政権の最後の年を費やすとともに、WHOの対策が中国寄りであると批判してきたトランプ大統領にすれば、4年前の意趣返しをしたということになるでしょう。

ところで、トランプ大統領の米国第一主義は、第二次世界大戦後の国際秩序の形成を牽引し、冷戦体制下で自他ともに自由主義諸国の盟主を認めてきた過去の米国の姿からすれば常識を逸脱した主張ながら、関税の引き上げによる保護貿易主義はマッキンリーの政策を彷彿とさせるものですし、孤立主義ともとれる国際協調主義からの離脱は初代大統領ワシントン以来の伝統であり、モンローのいわゆるモンロー主義によって具体的に理念化された態度でもあります。

その意味で、トランプ大統領の政策は米国に追随してきた諸国にとっては4年ぶりに先行きを見通せない事態をもたらすとはいえ、米国そのものの政治の推移からすれば決して意外なものではないということになります。

何より、米国が世界の警察官ではないことを明言したのは2013年9月10日の米国民に対するシリア問題についての演説における当時のオバマ大統領でしたし、第一次政権時代のトランプ大統領の保護主義的な貿易政策を継続したのは、バイデン前大統領にほかなりませんでした。

従って、トランプ大統領は、その発言が現在の国際情勢に即したものか否かは別として、過去の政権からの連続性という点に限ればこれまでの政策を踏襲し、現実化したことになります。

それでも、第一次政権には、マイク・ペンス副大統領のように、トランプ氏の主張に異議を唱えたり、ロシアへの批判的な姿勢や自由貿易主義を主張したりするなど、共和党主流派に近い人物が政権の中枢にいたものの、第二次政権は少なくとも発足当時は大統領の意向に忠実な姿勢を示す人物が揃っていることは、トランプ氏が様々な課題についてどこまで適切な判断を下せるか懸念を抱かせます。

特に、一時は最も先鋭的な反トランプ派の一人であったもののトランプ氏への支持に転向したJ.D.バンス副大統領にペンス氏のような役割を求めることは現実的ではなく、イーロン・マスク氏のように理念や原則ではなく自らの利益の極大化のために尽力する人物が新たな側近として台頭したことは、「米国第一」以外に理念と原則を持たないトランプ氏が一貫性を欠く政策を遂行することを示唆します。

しかも、ロシアや中国、北朝鮮は、4年後に任期を終えるトランプ氏に対し、終身的な権力を維持することを可能にする体制をとっています。

それだけに、まさに始まった第二次トランプ政権に対し、日本をはじめとする同盟諸国はいかにして多国間の強調こそが米国にとって最善の利益であるかをトランプ大統領に納得させることが肝要になるとともに、米国そのものにとってはトランプ大統領が退任したのちも権力者がその座に留まりうる権威主義的諸国といかに向き合うかが重要になります。

強制されたのでも脅されたのでもなく、一人ひとりの有権者が自らの判断で一票を投じ、選挙人が最後に選出したのがトランプ氏であったという事実をもとに、われわれは米国と世界のこれからに向かい合わねばならないのです。

[1]トランプ大統領 WHOからの脱退を表明 大統領令に署名. NHK NEWS, 2025年1月21日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250121/k10014698571000.html?utm_int=all_contents_just-in_002 (2025年1月21日閲覧).

<Executive Summary>
What Are Important Viewpoints to Understand the Second Trump Administration? (Yusuke Suzumura)

Mr Donald Trump is appointed as the 47th President of the United States of America on 20th January 2025. On this occasion, we examine the viewpoints to understand the future of the Second Trump Administration.

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