自民党総裁選挙の結果は何を意味するか
本日自由民主党の総裁選挙が行われ、第1回目の投票で岸田文雄前政務調査会長が256票、河野太郎国務大臣が255票を獲得し、決選投票では岸田氏が257票、河野氏が170票となり、岸田氏が第27代総裁に選出されました[1]。
第1回投票及び決選投票における各候補の得票数は、表の通りです。
表1 自由民主党総裁選挙の得票数の内訳
第1回投票で岸田文雄氏が第1位となったのは河野太郎氏が有利とされた事前の予想を覆すものであるところながら、一部では選挙戦の最終盤で岸田氏の優勢が報じられていました[1]。それだけに、河野氏が序盤での優位を徐々に奪われたということが言えるでしょう。
ここで注目すべきは、第1回投票で高市氏が国会議員票で第2位となったことや、野田氏の国会議員票が推薦人20名を超える34票であったことです。
こうした結果は、もとより各候補の積極的な選挙運動の成果であるとともに、河野氏に対する国会議員の感情を少なからず反省していることが推察されます。
権力闘争の中では、イデオロギーや外交戦略といった政策や理念ではなく、憎悪や嫉妬などが大きく作用するという指摘[3]をを考えれば、2017年8月に第3次安倍第3次改造内閣で外務大臣となって以降、防衛大臣、国務大臣と安倍・菅の両内閣で閣僚を歴任するとともに、今年1月には新型コロナウイルス感染症ワクチン接種推進担当相を兼ねるなど、周囲の注目を集め続けてきたことに対するある種の反感や嫉妬心が、投票に影響を与えたことが考えられます。
そして、河野氏への「あいつばっかり目立ちやがって」という感情を補助線として引くと、第1回目の投票結果が事前の予想と異なったことは岸田氏への支持の厚さを意味するものではないという点には注意が必要です。
すなわち、岸田氏は党総裁、さらに与党の党首として新内閣を率いるに当たり、国会議員だけでなく党員と党友から多くの支持を得た河野氏の処遇いかんにより、政権と党の運営が円滑になることも支障をきたすこともあるでしょう。
それだけに、当選後に党内の融和を強調した岸田氏は、今後いかなる手腕を発揮し得るか、自らの行動によって実証することが求められるのです。
[1]自民新総裁に岸田氏、決選投票で257票 河野氏は170票. 日本経済新聞, 2021年9月29日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA28DGM0Y1A920C2000000/?n_cid=BMSR2P001_202109291409 (2021年9月29日閲覧).
[2]総裁選、岸田・河野氏が軸. 日本経済新聞, 2021年9月29日朝刊1面.
[3]御厨貴監修, 渡邉恒雄回顧録. 中央公論新社, 2007年, 189頁.
<Executive Summary>
What Is a Meaning of the LDP Presidential Election 2021? (Yusuke Suzumura)
Today the LDP Presidential Election 2021 was conducted and Mr. Fumio Kishida was elected at the Final Ballot. In this occasion we examine a meaning of the election.