「開会式1か月前」に改めて東京オリンピック・パラリンピックの「開催の理念」を問う
昨日、今年7月23日(金、祝)に行われる予定の東京オリンピックの開会式まで1か月を迎えました。
現在、東京オリンピック及びパラリンピックを取り巻く様々な問題は日本のみならず国際社会の関心も集めています。
その一方で、関係者はこうした状況を等閑視するかのような態度を示し、様々な事項について対応が混乱しているのは周知のとおりです。
もちろん、こうした事態が、ある面において新型コロナウイルス感染症の感染拡大による大会の延期という、従来のオリンピック及びパラリンピックが経験しなかった状況に直面したことに起因することは明らかです。
他方で、招致の段階から「理屈は後から貨車でやって来る」という日本の政界で広く知られた論法に依拠するかのような不誠実な対応[1]を行ってきた結果、「やりたいんだからやるんだ、つべこべ言うな」、あるいは「施設を整えれば大丈夫。理念など不要だ」という姿勢が現在に至るまで続いています。
さらに、2013年9月の開催都市の決定以来8年の歳月を費やしながら、施設の準備は行っても大会の根幹をなす理念の確立を怠ったことで、現時点まで「世界各国が新型コロナウイルス感染症への対策に苦慮し、全ての国が問題なく参加できるわけではない中でオリンピックを開催するのは何故か」という基本的な問いかけに対する答えさえ得られないままとなっています。
それだけに、開催1か月前のこの時期に、改めて東京オリンピック・パラリンピックの開催に携わるすべての関係者に求められるのが「決まったから開催すればよい」という消極的な態度ではなく、「いかにしてオリンピックの精神を体現する理念を示しうるか」という積極的な姿勢であることを提起し、自覚的な対応を求める次第です。
[1]鈴村裕輔, 何故東京は2020年夏季五輪の開催都市として不適切なのか. 2013年9月6日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/710f604dd8d0e1a5aaf5eaf83d7f5d97?frame_id=435622 (2021年6月24日閲覧).
<Executive Summary>
Reviewing and Prospecting Situations Surrounding the Tokyo Olympics and the IOC (II) (Yusuke Suzumura)
The 23rd June 2021 is the 1 month prior to the Opening Ceremony of the Tokyo Olympic Games which will be held on 23rd July 2021. In this occasion we examine actual situations of the Tokyo Olympics and the International Olympic Committee.
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