NHK交響楽団第1983回定期公演
去る5月13日(土)と14日(日)にNHKホールにおいてNHK交響楽団の第1983回定期公演が開催され、昨日NHK FMで公演の第1日目の実況録音が放送されました。
今回は、前半にラフマニノフの『歌曲集』より「ラザロのよみがえり」と「ヴォカリーズ」及びグバイドゥーリナの『オッフェルトリウム』が、後半にドヴォルザークの交響曲第7番が演奏されました。グバイドゥーリナのヴァイオリン独奏はバイバ・スクリデ、指揮は下野竜也でした。
この日の公演は、バッハの『音楽の捧げもの』の主題に基づき、一定の速度の中で静寂と鳴動とが巧みに織り交ぜられたグバイドゥーリナの、ある種の異様な雰囲気をスクリデが正面から受け止め、一歩もあとずさりしない姿が印象深いものでした。
近年演奏会で取り上げられる頻度が多くなり、録音も増えているグバイドゥーリナの演奏の中でも、今回のスクリデは優れた成果を挙げたと言えるでしょう。
また、後半のドヴォルザークはティンパニの存在感の高さとヴァイオリンの張りに加えて輝きも際立った高音域とが作品の魅力をよく伝える演奏でした。
特に第4楽章は劇的な始まりから、交響曲第8番の第1楽章や交響曲第9番の第4楽章のような、ドヴォルザークの交響曲に特徴的な宇宙的な広がりをよく表現しており、聞き手の注意を逸らさない内容に仕上がっていました。
冒頭のラフマニノフもそれぞれ掌編ながらとりわけ下野が編曲した「ラザロのよみがえり」は今回が初演で、素朴さが際立つ原曲に壮麗さを与えた点が印象的でした。
いずれも個性豊かなラフマニノフ、グバイドゥーリナ、ドヴォルザークを揃え、それぞれの音楽の特徴をよく伝える演奏を作り上げた下野の手腕が際立った、今回の公演でした。
<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 1983rd Subscription Concert (Yusuke Suzumura)
The NHK Symphony Orchestra held the 1983rd Subscription Concert at the NHK Hall on 13th and 14th May and broadcasted via the NHK FM on 18th May 2023. In this time they performed Rakhmaninov's The Raising of Lazarus and Vocalise, Gubaidulina's Offertorium, and DVorak's 7th Symphony. Solo violin was Baiba Skride and conductor was Tatsuya Shimono.