「ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染問題」が示す「基本的な防疫措置の励行」
2月3日(月)から、新型コロナウイルスの感染者が乗船していたことが確認されたため横浜沖で停泊中の大型客船ダイヤモンド・プリンセス号[1]は、現在も乗客が下船できないままです。
ダイヤモンド・プリンセス号の運航会社が乗客への代金の全額払い戻しなどを表明するなど[2]、事態は長期化の様相を呈しています。
新型コロナウイルスについては、すでに本欄も指摘する通り、潜伏期間が長く、感染力も強い一方で致死率が低ければ、今後、新型肺炎の感染者が世界中に広がることが推測されます[3]。
2003年に起きた重症急性呼吸器症候群(SARS)に比べて軽症者やウイルスに感染しても症状が出ない患者の割合が低くないことが対応王を困難にしており、潜伏期間でも感染する場合には封じ込めを目指した公衆衛生対策にとって致命的であるという指摘もなされています[4]。
実際、ジョンズ・ホプキンズ大学システム科学工学センターが公開した、新型肺炎の感染が確認された場所と症例数を即時的に表示する地図では、日本時間の18時33分時点で世界各国での患者は40,563人となっており、日本での感染者数は26名となっています[5]。
こうした状況は、「日本と中国との人の行き来を考えると、中国以外の国で最初に感染拡大するのが日本になる可能性は十分に考えられる」という予測[4]の蓋然性が高まっていることを示唆します。
今回のダイヤモンド・プリンセス号の事例は、一面において日本における新型コロナウイルスへの対応が水際対策の段階を過ぎ、国内対策の段階に入りつつあることを予想させます。
それとともに、例年、冬の時期はインフルエンザの罹患者数が増加することも考えれば、われわれは新型コロナウイルス問題以外にも対応すべき事項があることを絶えず念頭に置かねばなりません。
そして、新型コロナウイルスは「人から人に感染が広がっていく感染連鎖が見えない」[4]とされるだけに、むしろ含嗽や手洗いなどの自らなしうる防疫の措置を励行することであり、事態をいたずらに軽視したり、あるいは過剰に反応することではない[3]といえるのです。
[1]大型客船 全3500人再検疫. 読売新聞, 2020年2月4日朝刊1面.
[2]クルーズ船運航会社 代金全額払い戻しへ 集団感染受け. NHK NEWS, 2020年2月10日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200210/k10012279681000.html (2020年2月10日閲覧).
[3]鈴村裕輔, 「新型肺炎問題」で求められるのはいかなる取り組みか. 2020年1月29日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/469500f76d49ad9b5eb9d2fc03fd4271?frame_id=435622 (2020年2月10日閲覧).
[4]感染「次、日本で拡大も」. 日本経済新聞, 2020年2月3日朝刊3面.
[5]Mapping the Wuhan Coronavirus (2019-nCoV). Johns Hopkins University, 23rd January 2020, https://systems.jhu.edu/research/public-health/ncov/ (accessed on 10th February 2020).
<Executive Summary>
Today's article in my weblog "An Important Way to Manage a Novel Coronavirus Outbreak to Do Fundamental Ways for Prevention of Epidemics" (Yusuke Suzumura)
A cruise ship the Diamond Princess is anchored in Yokohama since 3rd February by the reason of a novel (new) coronavirus (2019-nCoV) outbreak. It is very important for us to do what we can do and the authorities shall do their best without prejudices.