フランス国民議会第1回投票での国民連合の躍進をわれわれはどのように考えるべきか
去る6月30日(日)に第1回投票が行われたフランス国民議会では、マリーヌ・ルペン氏の率いる国民連合(RN)が33%の得票率で第1位となり、左派の新人民戦線(NFP)が得票率29%で第2位、そしてエマニュエル・マクロン大統領の与党連合は第3位となりました[1]。
RNはこれまで2回の欧州議会選挙で首位となり、今年6月9日(日)の選挙でも過去最高の得票率を記録していました。
こうした状況から、RNは欧州議会選挙においてはEUに対する批判的な意見を、フランス国内ではマクロン政権に対する批判的ないし懐疑的な有権者を取り込むことに成功し、勢力を拡大していると考えることが出来ます。
あるいは、2017年と2022年の大統領選挙をみると、ルペン氏の得票率は13.20%から18.68%に増加しており[2]、フランス国民にとってRNへの支持が定着していることが分かります。
ところで、RNは極右と称されます。
確かに、RNの前身である国民戦線(FN)は創設者でマリーヌ・ルペン氏の父でもあるジャン=マリー・ルペン氏が反ユダヤ主義や反移民などの人種差別的な政策を掲げており、その極端な排外主義的な態度は極右と見なされても仕方のないものであったと言えます。
一方、現在のRNはどうでしょうか。マリーヌ・ルペン氏が2011年に党首となって以降、FNは徐々に過激な政策を控えるようになり、2018年には党名をFNからRNに変更するなど、有権者の抵抗感を薄める方針を取ってきました。
これは、ルペン氏が議会での勢力の伸張だけでなく、大統領選挙での勝利を目指した戦略的な方向転換であり、その結果が近年の選挙での成果に結びついています。
現時点で、7月7日(日)の決選投票を受けてRNから首相が誕生する可能性が高まっています。
ルペン氏の最終的な目標である大統領選挙での勝利には及ばないものの、極右とされるRNが内政を担当するようになれば、フランスにとってもEUにとっても重要な局面を迎えることになると考えられます。
しかし、FN時代の極端な排外主義政策やRNの移民制限策などは政権を担当する可能性がないか極めて低い野党であったからこそ主張できたものであり、ひとたび政権与党となれば、国内だけでなく国際社会との関係にも配慮する必要が生じ、より現実的な方策を取らなければフランスの国家としての信頼が揺らぐことは明らかです。
もとより他国の評価に依存せず、自らの欲する政策を遂行することもあり得るでしょう。また、政権を獲得するまでは過激な主張を避ける韜晦的な態度の背後にRNの真の姿があるかもしれません。
ただし、労働組合や企業経営者などの理解と協力なしに政権を運営することが難しい現実を考えれば、野党時代の公約と異なる政策を導入する可能性は皆無ではありません。
このとき、RNはもはや極右政党ではなく単なる保守政党となることでしょう。
それだけに、国際社会はRNの極端な政策に警戒するだけでなく、政権与党を目指して掲げられた現実的な主張がどこまで実行されるのかにも注視する必要があると言えるのです。
[1]Élections en France : zoom sur les électorats des partis politiques. euronews, 2nd July 2024, https://fr.euronews.com/my-europe/2024/07/02/elections-en-france-zoom-sur-les-electorats-des-partis-politiques (accessed on 2nd July 2024).
[2]Législatives 2024 : le RN réalise un score historique avec 34 % des voix, Marine Le Pen élue dès le premier tour. PUBLiC SENAT, 30th June 2024, https://www.publicsenat.fr/actualites/politique/legislatives-2024-le-rn-realise-un-score-historique-avec-34-des-voix-marine-le-pen-elue-des-le-premier-tour (accessed on 2nd July 2024).
<Executive Summary>
How Should We Deal with the Rassemblement National? (Yusuke Suzumura)
The First Round of the General Election of France was held on 30th June 2024 and the Rassemblement National (RN) by Marine Le Pen became the first party. On this occasion, we examine our attitude to deal with the RN.