浮川和宣さんが「私の履歴書」で示した挑戦心と冒険心

2022年3月度の日本経済新聞の連載「私の履歴書」は、MetaMoji社長の浮川和宣さんが担当されました。

今回の連載で印象的であったのは、技術者、経営者としての浮川さんの歩みの中で、夫人の初子さんの果たした役割が大きかったということです。

例えば、浮川さんが創業したジャストシステムは徳島県を代表する企業として広く知られています。しかし、同社の所在地が浮川さんの出身地の愛媛県ではなく徳島県であるのは、1979年の創業時に本社としたのが徳島市にある初子さんの実家の応接間であったことに由来するというのは、私にとって初めて接する逸話でした。

また、ジャストシステムの代表作である日本語ワープロソフト「一太郎」がスペースキーを利用して文字の変換を行うという仕様を採用した背景にもプログラマであった初子さんの尽力があったこと、さらにジャストシステムがキーエンスの傘下に入った後、新たにMetaMojiを創業した際にも、初子さんとともに新たな事業に取り組もうという挑戦心があったことなども、印象深い話題です。

何より、東京芝浦電気の子会社である西芝電機を退職した後に、最初に取り組んだのがオフィスコンピューター(オフコン)の販売代理店業務で、大阪での飛び込み営業を行い成果が上がらない日が続く中でも悄然としない様子は、物事に前向きに取り組もうとする浮川さんの気性を示すかのような、愉快なものでした。

東京に出れば大企業の中に埋没するが、徳島であれば地域を代表する企業となる、という趣旨の考えや、「一太郎」や「マゼック」などを実用化する際に細部まで徹底してこだわることで従来にない画期的な製品へと仕上げる様子などは、起業家に求められる冒険心を示すものに他なりません。

その様の意味でも、自身の一代記であるとともに夫婦の物語でもあった浮川和宣さんの「私の履歴書」は、単行本化によりさらに多くの読者の閲に供されることが願われる内容であったと言えるでしょう。

<Executive Summary>

Mr. Kazunori Ukigawa and Half His Life Seen from My Résumé (Yusuke Suzumura)

Mr. Kazunori Ukigawa, the founder of the JustSystems Corporationan and the Chief Executive Officer of the MetaMoJi Corporation, wrote "My Résumé" on the Nihon Keizai Shimbun from 1st to 31st March 2022.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?