広沢一郎市長は名古屋市政に対して主体性を発揮できるか
昨日投開票が行われた名古屋市長選挙はいずれも新人の7人が立候補し、前名古屋市副市長の広沢一郎候補が当選しました。
今回の市長選挙は今年10月27日(日)の第50回衆議院議員総選挙に当時の河村たかし市長が立候補したことに伴い執行されたもので、河村氏の下で副市長を務め、その市政を全て継承して発展させることを強調した広沢氏と、いわゆる河村市政の見直しと新たな名古屋市のあり方を提起した前参議院議員の大塚耕平候補を中心として選挙戦が行われました。
広沢氏が河村市政の継承を全面的に強調したことは、その選挙ポスターを見れば明瞭です。
すなわち、広沢氏の顔のすぐ右後ろに河村たかし氏の顔が印刷されている様子からは、広沢氏が河村氏の取り組みに基づいて市政に取り組むことが示されていました。
選挙ポスターの作り方は、所定の事項の記載を除けば候補者に任されています。従ってどのようなポスターがあっても不思議ではありません。
また、2019年4月から2023年4月まで4年にわたり名古屋市に居住した私のささやかな経験からも、市長時代の河村氏が有権者から強い支持を受けていただけに、その後継者と明記されることは、既存の体制からの抜本的な変化を避けたいと考えていた人々が広沢氏を支持することを容易にしたと言えるでしょう。
それでも、候補者のすぐ後ろに前市長の顔が記される挙ポスターは珍しいものであり、今後の選挙ポスターの研究を行う上で重要な標本となることは間違いありません。
それとともに、候補者と後継者に指名した者が並置されることで、あたかも前任者が後任者に何らかの影響力を行使する、もしくは姿勢に介入する可能性を推察させるものでした。
もちろん、河村市政の全面継承を訴えていたのですから、広沢氏が河村氏の顔写真を自らの写真とほとんど同じ大きさで掲載することは、自らの主張を視覚的に示す者であり、当然の措置と言えるかも知れません。
しかしながら、こうしたことは、広沢氏が河村氏の影響下に置かれ、主体性をもって名古屋市の行政に取り組めるのか疑問を抱かせる余地を残すものでもあります。
それだけに、これからの広沢一郎氏は、河村市政の継承に留まらず、真に名古屋市民の利益のために尽力できるかが問われることになるのです。
<Executive Summary>
Will Nagoya Mayor Ichiro Hirosawa Be Able to Exercise His Initiative in City Government? (Yusuke Suzumura)
The Mayor Election of the City of Nagoya was held on 24th November 2024 and Candidate Ichiro Hirosawa got elected. On this occasion, we examine the possibility of Mayr Hirosawa to exercise his initiative in City Government.