「大リーグの韓国開幕戦」で考える大リーグの海外公式戦が持つ意味
明日から2日間、韓国の首都ソウルで大リーグのサンディエゴ・パドレス対ロサンゼルス・ドジャースが公式戦を行います。
韓国で大リーグの公式戦が行われるのは今回が初めてであり、アジアでは日本に次いで2番目の公式戦開催国となります。
今回の2試合は、パドレスにダルビッシュ有選手と松井裕樹選手が、ドジャースに大谷翔平選手と山本由伸選手が在籍しており、日本でも注目を集めています。
現在、大リーグ機構は大リーグの国際戦略の一環として公式戦の海外での開催を積極的に進めており、2019年に始まったいわゆる「ロンドン・シリーズ」などは大リーグのさらなる国際化の象徴となっています。
また、伝統的に野球が盛んで、オリンピックやワールド・ベースボール・クラシックの強豪国である韓国も2017年に機構が事務所を開設して以来、一層の野球人口の拡大のための施策が導入されており、今回の2試合は一連の取り組みの最初の仕上げとなります。
一方、ロブ・マンフレッド・コミッショナーが外国での公式戦の開催の意義を強調するとともに、選手の移動などの不可を考慮するといった名目から、将来的な公式戦の数の削減に言及する点は、重要な意味を持ちます。
すなわち、現在の年俸は年間162試合という制度の下での選手と球団が合意しているものです。
そのため、例えば公式戦の数が162試合から削減されれば、球団経営者側は年俸額の決定の前提となる試合数が異なるということを理由に、少なくとも試合数の削減率に相当する年俸額の削減を主張する可能性があります。
選手の年俸が成績の内容に伴って変動することは選手会として何らの異存もないものの、試合数の削減といった選手自身の責めに帰すことのない要因によって年俸額が影響されることは受け入れがたいものです。
実際、2020年に新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した際、試合数を短縮してシーズンを開催することになると、最初は試合数を巡り、次に試合数の変更に伴う年俸額の調整について労使間での交渉がなされました。
このとき選手会側が当初は強硬に試合数と年俸額の連動を拒んだことは、マンフレッド・コミッショナーの発言が今後どのような展開をもたらすかを考える際の一助となります。
もとより、野球の国際や大リーグの国際戦略としての公式戦の開催は誰もが拒みがたいものです。
そして、そのような一種の大義名分と試合数の削減を連動させるところに労使問題担当副会長として名を成したマンフレッド・コミッショナーの周到さが表れている言えます。
それだけに、これからの海外での公式戦の開催がいかなる推移を示すか、注目されるところです。
<Executive Summary>
A Viewpoint to Understand the Meaning of MLB's International Games (Yusuke Suzumura)
The San Diego Padres and the Los Angeles Dodgers will have a two-game series at Seoul on 20th and 21st March 2024. On this occasion, we examine the meaning of MLB's international games based on the confliction between the MLB Players Association and the owners of MLB teams.