石破茂首相は「楽しい日本」の考え方をいつまで用いるか

石破茂首相が今年1月の施政方針演説で表明した「楽しい日本」の考えは、大きな反響を呼び起こしているとはいいがたいのが現状です。

ここには、田中角栄の「日本列島改造論」を手本とした「令和の日本列島改造」と同じく、堺屋太一の「楽しい日本」の考えを借りたという独創性の欠如が影響を与えていると言えるかもしれません。

それとともに、「楽しい日本」という言葉を聞いたときに、「楽しい」とは何か、「楽しい日本」とはどのような状態かを直観的に把握することが容易ではないという点も見逃せません。

しかも、「楽しい日本」は堺屋太一の構想では未来の日本の姿を示してはいるものの、将来への見通しが明るくなければ、「楽しい日本」を実現しようという意欲も働きにくくなりがちです。

これは、岸田文雄前首相の「新しい資本主義」という考えが、現在の資本主義をどうとらえ、今のあり方とどのように違うのかという点を聞く人が容易に理解するのが難しいこともあって普及しなかったのと同じ構造となります。

それだけに、最後まで断念はしなかったものの徐々に「新しい資本主義」という表現を使う頻度を少なくした岸田氏と同じく、石破首相が「楽しい日本」への言及の度合いをどの程度まで変化させるのか、今後の注目点の一つと言えるでしょう。

<Executive Summary>
What Is the Future of Prime Minister Shigeru Ishiba's Concept "Enjoyable Japan"? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Shigeru Ishiba advocated a new concept "Enjoyable Japan" in his General Policy Speech in January 2025. On this occasion, we examine meaning and possibility of this concept.

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