再びパシフィックフィルハーモニア東京の進境の著しさを紹介した『ブラボー!オーケストラ』

昨日のNHK FMの番組『ブラボー!オーケストラ』は、先週に引き続き、パシフィックフィルハーモニア東京の第152回定期演奏会の実況録音の様子が紹介されました。

前回は公演の前半に置かれた、角野隼人を独奏に迎えてのアデスのピアノとオーケストラのための協奏曲が放送されたのに続き、今回は後半のホルストによる組曲『惑星』の演奏が取り上げられました。指揮は前回と同様に飯森範親でした。

日本初演となる曲を取り上げるとともに多層的な作品を丹念に解きほぐして組み立て直した点に楽団の発展の姿が記されていたアデスに対し、ホルストは今や世界各地の楽団にとって欠かすことの出来ない作品です。それだけに、広く知られた「木星」を含む各曲をどのように演奏するかで、楽団の現在の力量がより明瞭に描き出されることが推察されました。

今回の放送では、冒頭から奏者にも聞き手にも緊張感を強いる「火星」や躍動感と抒情性を湛える「木星」だけでなく、幽玄さと広がりを備えた「海王星」に至るまで、過度に熱することも作品の自然な推移に身をゆだねるのでもなく、集中力を絶やさない演奏であったことが示されました。

特に「土星」は『惑星』の7つの曲の中で最も演奏時間が長く、しかもうつろな表情の箇所ながら、各楽器が互いに絶妙な位置を保ち続けたことでかえって濃密な演奏に仕上がったのは、今回の公演の大きな収穫であったと言えるでしょう。

もとより1回の公演で楽団の現在の位置が正確に測れるわけではなく、過去から現在を通覧することで初めてその全貌を知ることができます。

それでも、満を持して臨んだであろう公演で所期の成果をいかんなく挙げたことそのものの意味が変わることはありません。

そして、この点に、パシフィックフィルハーモニア東京の進境の著しが現れていた言える、今回の『ブラボー!オーケストラ』だったのです。

<Executive Summary>
"Bravo! Orchestra" Shows a Significant Development of the Pacific Philharmonia Tokyo (II) (Yusuke Suzumura)

A radio programme "Bravo! Orchestra" broadcasted by the NHK FM on 23rd October 2022 picked up the second half of the 152nd Subscription Concert of the Pacific Philharmonia Tokyo. In this time, they performed Holst's The Planets. Conductor was Norichika Iimori.

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