「トイレットペーパー買い占め騒動」が示す「デマを避けることの重要性」

新型コロナウイルスの感染の拡大に伴い、ティッシュペーパーやトイレットペーパーといった日用品の買い占めの動きが見られます[1]。

一部の日用品の急激な価格高騰の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「トイレットペーパーやその原料が中国輸入に依存しており品薄になる」と誤った情報がSNSなどで広まったためと考えられます[1]。

こうした現象は、不正確な情報に基づいて行動したり、既知の情報を際限なく拡張させた結果もたらされていると言うことが出来るでしょう。

実際、風説や流言飛語の形態が人々の行動に与える影響については種々の研究がなされており、ナップが第2次世界大戦の最中に行った、「不安や恐れの投影」、「願望の投影」、「憎しみや反感の投影」という流言の3つのあり方[2]は、今回の買い占めにも適用されるでしょう。

また、2011年の東日本大震災の際に生じた根拠がない情報としてのデマを対象とした梅島らの研究[3]では、Twitterにおけるデマの拡散に関して、以下のような仮説が提起されています。

仮説1 URLを含むRTはデマである可能性が低い
仮説2 デマは「行動を促す」「ネガティブな」「不安を煽る」内容が多い
仮説3 「行動を促す」内容であるツイートはRTされやすい
仮説4 「ネガティブな」内容であるツイートはRTされやすい
仮説5 「不安を煽る」内容であるツイートはRTされやすい

これらの仮説はいずれも統計的に妥当性が確認されていることから[3]、今回の買い占め問題でもTwitter上での誤った情報の伝播の実相の一端を伝えると言えるでしょう。

その一方で、悪意を持たないにもかかわらず誤った情報の拡散に加担しないためには、梅島らの仮説が示す行動、特に仮説3から仮説5で挙げられた態度を避けることも重要であることが推察されます。

こうしたことから、実証的で定量的な研究の成果が社会に還元されることは、根拠がない情報としてのデマが広まることを抑止するために、一定の効果を持つと考えられるのです。

[1]トイレットペーパーなど買い占め・高騰. 日本経済新聞, 2020年3月1日朝刊7面.
[2]Knapp RH. A Psychology of Rumor. The Public Opinion Quarterly, 8(1): 22-37, 1944.
[3]梅島彩奈ら. 災害時Twitterにおけるデマとデマ訂正RTの傾向. 研究報告 情報基礎とアクセス技術 (IFAT), 2011-IFAT-103(4): 1-6, 2011.

<Executive Summary>
How Can We Avoid to Spread Rumors? (Yusuke Suzumura)

In Japan some pople tried to occupy toilet paper and tissue paper influenced by rumors. It might be very important for us to have exact information to avoid rumors.

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