「『クラシック音楽館』のブロムシュテット」が持つ大きな意味
去る11月21日(日)、21時から23時までNHK教育テレビの『クラシック音楽館』でヘルベルト・ブロムシュテットの指揮の様子が放送されました。
今回は、今年10月16日(土)に東京芸術劇場で行われたNHK交響楽団の第1939回定期公演と2013年9月11日(水)にサントリーホールで行われた第1760回定期公演の実況録画が紹介されました。
第1939回定期公演については、公演当日の実況中継に基づく寸評を本欄でご案内した通り、求心力の高い演奏でした[1]。耳を通して了解された公演の特徴は、今回の放送で映像により視覚的に確認されました。
特に、入退場時の足取りの確かさや椅子に座らず指揮をする様子からは、一般には余生を楽しむ時期とされる94歳となっても音楽界の第一線で活躍する背景に、良好な健康が大きな役割を果たしていることが推察されました。
その一方で、「現役最年長」、「94歳」と高齢にもかかわらず活躍する様子が注目されることは、譜面そのものに向き合い続けるブロムシュテットの音楽作りへの理解を妨げかねないものです。
むしろ、「94歳」といった言葉が不要な、説得力のある演奏は、研鑽や発展とは物理的な年齢とは関係なく、そのような取り組みを行おうとする意欲や意思の存する限り進歩は続くことをわれわれに示していると言えるでしょう。
その意味でも、今回の放送は現在のブロムシュテットがわれわれに何を教えるかを伝えるものであったと考えられた次第です。
[1]鈴村裕輔, NHK交響楽団第1939回定期公演. 2021年10月17日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/eefd64c6d84c8d649eae15d2479a7ca8?frame_id=435622 (2021年11月23日閲覧).
<Executive Summary>
Blomstedt on "Classical Music Hall" Is an Important Lesson for Us (Yusuke Suzumura)
A TV programme Classical Music Hall broadcasted by NHK Educational featured selected concerts conducted by Herbert Blomstedt on 21st November 2021. It is remarkable opportunity for us to understand a meaning of Blomstedt and his activities.