川勝平太静岡県知事の辞意表明の持つ意味は何か

昨日、静岡県の川勝平太知事が会見し、4月1日(月)に行われた静岡県庁の入庁式での訓示に職業差別と捉えられかねない不適切な内容があったとして批判されていることを受け、今年6月の定例県議会をもって辞任する意向を示しました[1]。

県庁をシンクタンクとして捉え、県庁の職員は何かを作り出すことはないかもしれないものの知性をもって県の発展に貢献するという趣旨の発言そののものは、県政の実務に携わる新入職員の意欲を高めるためにも重要です。

その一方で、他の職業を参照して県庁職員のあり方を定義することは不要なことであり、川勝知事は無用の例示をすることで訓示の内容が正しく伝わることを自ら妨げたと言えるでしょう。

従って、発言の内容を報道機関の切り取りとし、不適切な内容ではなかったとすることは、自らの立論の不手際を覆い隠そうとするものに他なりません。

これに対して、川勝知事は自らの過去の発言との整合性を取るために今回の辞職を決意したのであれば、その判断は合理的なものです。

すなわち、2023年7月24日(月)の記者会見で、自らの不適切発言に関連して県議会で不信任決議案が審議され、最終的に否決された際、「また不適切発言をすれば辞職する覚悟で職務にあたる」と述べてます[2]。

今回の辞意の表明は昨年の発言を踏まえたものということになります。

しかし、辞職後の知事選に出馬せず、後継の指名も行わないと発言しながら[3]、立憲民主党の渡辺周衆議院議員に出馬を打診すると受け取れる連絡を行うなど[4]、川勝知事の言動には不透明な点があります。

これは、自らの発言が政局化することで県政の混乱をもたらしたという点を強調して辞意を表明した川勝知事自身が、後継者問題を政局化していることを示唆します。

しかも、川勝知事は2021年に不適切発言の責任として自ら報酬を返上する意向を示したものの、その後返していないことが発覚して県議会との軋轢を起こしています[2]。

それだけに、今年6月の定例県議会の終了後に川勝知事が本当に辞任するのか否か、辞任したとして知事選に出馬しないのか否か、出馬しない場合に後継者を示するのか否かという点を含め、今後の動向が注目されます。

[1]静岡・川勝知事が辞意. 日本経済新聞, 2024年4月3日朝刊1面.
[2]不適切発言「次は辞職」. 日本経済新聞, 地方経済面 静岡, 2023年7月25日朝刊6面,
[3]静岡・川勝知事、「心から謝罪」も撤回せず 出馬は否定. 日本経済新聞電子版, 2024年4月3日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC039KW0T00C24A4000000/ (2024年4月3日閲覧).
[4]川勝・静岡知事、立民の渡辺周元防衛副大臣に後継打診. 日本経済新聞電子版, 2024年4月3日, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA031JB0T00C24A4000000/ (2024年4月3日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Meaning of Shizuoka Governor Heita Kawakatsu's Announcement of Intention to Resing the Position? (Yusuke Suzumura)

Shizuoka Governor Heita Kawakatsu announces his intention to resing the position by his incorrect address on 2nd April 2024. On this occasion, we examine the meaning of Governor Kawakatsu's announcement.

いいなと思ったら応援しよう!