「GoToの場当たり的対応」よりも重要な問題は何か
本日、赤羽一嘉国土交通大臣が記者会見を行い、国内旅行の一部を補助するいわゆる「Go To トラベル」事業について、東京都を発着する旅行を対象外としたことによる予約の取り消しにかかる料金のうち、7月10日(金)から17日(金)までの契約分を補償すると表明しました[1]。
「Go To トラベル」事業については、当初8月上旬とされていた開始日が7月22日(水)となったことや東京都での新型コロナウイルス感染症の再拡大を受けて都民の旅行や都内に宿泊する企画などを補助の対象から除外としたこと、あるいは予約の取り消しに関連して発生する料金は補償しないという方針が撤回されるなどしています。
そのため、事業の開始の前日まで制度の変更が繰り返される点に世論の批判が高まることが推察されます[1]。
実際、政府の取り組みを「場当たり的」と批判する意見も見られます[2]。
確かに、制度の詳細が決定する前に事業を開始するという事態は、一面において関係省庁や部局の取り組みの杜撰さを示唆します。
また、このようなある種の混乱は、「Go To トラベル」事業のために用意された予算の算定額の妥当性や正当性、あるいは適正な執行の可能性に疑念が生じさせる余地を残します。
一方、すでに本欄の指摘する通り、「Go To トラベル」事業は新型コロナウイルス感染症の拡大による需要と供給の急激な変化に対応するための措置であること[3]を考えるなら、これまで経験に乏しい状況に対応する中で、所期の案に拘泥して目的を達成できなくなるより、たとえ朝令暮改という誹りを受けるとしても、目的のために手段を改めるなら、そのような態度には一定の合理性が認められると言えるでしょう。
むしろ、憂うべきは、事業を巡り、受託した組織を構成する14の団体から自民党の議員37人に献金が行われていると報じられていること[4]です。
真偽のほどが不明であり、諸法規に従ったものであれば問題ないものの、事業の適切な立案と実施に疑念が抱かれるようなことが好ましくないのは、自ずから明らかです。
その意味でも、関係者には綱紀の粛正が求められるのです。
[1]解約補償10~17日契約分. 日本経済新聞, 2020年7月21日夕刊1面.
[2]蓮 舫 ・ 立 憲 民 主 党 ( り っ け ん ). "これを「場当たり的」と言わず何と言えばいいのだろうか。 16日に東京除外 17日解約補償しないと表明 20日キャンセル料補償方針 そして、「控えて」という若者、高齢者の年齢や人数は旅行業者任せ。 1.4兆円もの税金は安倍政権の私物ではない。 見直しをすべきです。". 2020年7月21日12時12分, https://twitter.com/renho_sha/status/1285412344609140738 (2020年7月21日閲覧).
[3]鈴村裕輔, 「GoTo東京発着除外」が持つ意味は何か. 2020年7月17日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/897fc005e7d98c2823a5487a5c2f41a8?frame_id=435622 (2020年7月21日閲覧).
[4]Go Toキャンペーン受託団体が二階幹事長らに4200万円献金. 文春オンライン, 2020年7月21日, https://bunshun.jp/articles/-/39127 (2020年7月21日閲覧).
<Executive Summary>
What Is a More Important Issue of the "Go To Travel" Campaign? (Yusuke Suzumura)
The "Go To Travel" campaign will start from 22nd July 2020. It might be important for the authorities to enforce official disciplines, since the campaing is not a private activitie but the pubilc policy.
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