「新型コロナウイルスのパンデミック宣言」終息後にWHOを待ち受けるものは何か

昨日、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの拡大について、世界的な流行の段階にあることを宣言しました[1]。

記者会見においてWHOのテドロス・アダノム事務局長は各国が緊急かつ積極的な対応策を講じることを改めて要請するとともに、複数の国で新型コロナウイルスの制御と抑制が可能であることが実証されたと指摘し、WHOとしては宣言後も従来の助言の内容を変更する意思がないことを明言しています[1]。

改めて確認するまでもなく、現在の国際社会にとって、目下の最大の懸案事項は新型コロナウイルスの拡大の抑制と終息です。

そのためには、WHOが率先して各国に適切な対策の助言を行うことは重要な施策です。

その一方で、事態が鎮静化した後にWHOを待ち受けるのは、統治機能の改革となることでしょう。

例えば、テドロス事務局長がエチオピアで閣僚を歴任し、エチオピアは中国から巨額の援助と投資を受け、債務免除を受けていること、さらに国連に対する中国の分担金拠出額が米国に次いで第2位となっていることなどから、WHOが中国に配慮して各種の判断が遅れたという指摘がなされています[2]。

こうした懸念は、あるいは揣摩臆測の域を出ないものかも知れません。

しかし、世界各国の人々の日常生活や企業活動、あるいは経済運営の前提が公衆衛生の確保に依存することも疑い得ないところです。

そのため、たとえ憶測にすぎないとしても、疑念を払拭することはWHOの取り組みの実効性を高めるという点で意味がありますし、国際社会の注目と関心がWHOの改革に集まるとしても不思議ではありません。

それとともに、われわれも、国連をはじめとする種々の国際機関が中立で公平であることは望ましいものの、実際のあり方は異なるという事実を改めて確認し、これらの国際機関の役割を過大視することも、矮小化することも避けなければならないのです。

[1]WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19 - 11 March 2020. World Health Organization, 11th March 2020, https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19---11-march-2020 (accessed on 12th March 2020).
[2]The coronavirus crisis is raising questions over China's relationship with the World Health Organization. CNN, 14th February 2020, https://edition.cnn.com/2020/02/14/asia/coronavirus-who-china-intl-hnk/index.html (accessed on 12th March 2020).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of WHO's Pandemic Declaration of Coronavirus Disease COVID-19? (Yusuke Suzumura)

The World Health Organization (WHO) declares a pademic of coronavirus disease COVID-19 on 11th March 2020. It implies that after the end of the pandemic a reformation of the WHO might be remarkable topic for international society, since its independence is somewhat unclear.


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