「自民党総裁選」は「選挙の顔」を選ぶ場か
本日、自由民主党の総裁選挙が告示され、届け出順に河野太郎国務大臣、岸田文雄前政務調査会長、高市早苗前総務大臣、野田聖子幹事長代行の4氏が立候補しました[1]。
今後、9月29日(水)の投開票に向けて、各候補が論戦を行うことになります。
10月21日(木)に衆議院議員が任期満了を迎えるため、今回の総裁選挙は必ず行われる衆議院選挙に向けた「選挙の顔」、「勝てる顔」を選ぶという要素が強くなっています。
特に、2012年12月の総選挙で初当選した、あるいはその後安倍晋三前首相の下で行われた2回の総選挙で初当選した当選3回目以下の議員は自民党に対する批判を受けての「逆風選挙」を経験していないだけに、支持基盤が弱く、「勝てる顔」を選ぼうとする可能性が指摘されています[2]。
大島理森衆議院議長を除く自民党の衆議院議員275名のうち、当選3回以下の議員は126名ですから、これらの議員の動向が選挙戦に影響を与えることは容易に推察されます。
その一方で、「選挙の顔」を総裁に擁立すれば実際の選挙に勝利するとは限らないということは、過去の結果を見れば自明のことです。
むしろ、ある人物が「選挙の顔」と見做される理由の大部分が世論調査にあるとすれば、そのような「選挙の顔」とは多分に知名度に依存するものと言わねばなりません。
すなわち、本人の能力や所信、あるいは提唱する政策などではなく、どれだけ有権者の耳目を集める言動を行っているかという点が、「選挙の顔」を形成していることになります。
もちろん、党首として推戴する人物が有権者の間で親しまれる人物であることは、党にとって不利ではありません。しかし、党首の親しみやすさと党への信頼は別の事柄であり、両者が常に一致するものではないことは論を俟ちません。
しかも、本来「選挙の顔」とは党首に擁して選挙に臨み、たとえ結果が芳しくないとしても悔いるところのない人物であって、「勝てる顔」ではないはずです。
従って、今回の総裁選挙の投票権を持つ関係者には、総選挙で勝てそうな総裁を選ぶのではなく、その総裁の下で敗北を喫しても不満を抱かないような、優れた人格と経綸を備えた人物を選出することが期待されます。
[1]自民総裁選 4氏届け出. 日本経済新聞, 2021年9月17日夕刊1面.
[2]派閥 若手締め付け効かず. 読売新聞, 2021年9月7日朝刊4面.
<Executive Summary>
What Is the "Symbol of the Election": A Simple Notification for the LDP Presidential Election 2021? (Yusuke Suzumura)
The LDP Presidential Election 2021 is announced today and four candidates start to join the campaign. In this occasion we examine a term the "symbol of the election" which is emphasised at the Presidential Election.
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