【追悼文】ネルロ・サンティさんを巡るいくつかの思い出

昨日、指揮者のネルロ・サンティさんが死去しました。享年88歳でした。

サンティさんが歌劇と交響管弦楽の分野で現在のイタリアを代表する指揮者の一人であったことは、1962年に初めて招聘された米国のメトロポリタン歌劇場の重要な指揮者であること、また旧バーゼル放送響楽団の首席指揮者を1986年から1997年まで務めたことからも推察されるところです。

1999年に読売日本交響楽団の定期演奏会に、2001年にNHK交響楽団の定期公演に登場して以来、日本との関わりも浅からぬことは広く知られるところです。

私も、2014年11月21日(金)にNHK交響楽団の第1794回定期公演でサンティさんの指揮する演奏に接する機会がありました。

この時は、前半にロッシーニの歌劇『どろぼうかささぎ』序曲とベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」が、後半にチャイコフスキーのイタリア奇想曲とレスピーギの交響詩「ローマの松」が取り上げられました。

しかし、チューリッヒ歌劇場の岡崎慶輔が客員としてコンサートマスターを務めたこと、さらにサンティさん自身も体調が優れなかったのか、棒捌きと音楽作りのいずれにおいて精彩を欠いたことは、この日の演奏に限っては、楽団との相性の一致しなかったことを推察させるものでした。

一方で、2001年に録音されたチューリッヒ歌劇場でのロッシーニの歌劇『セヴィリアの理髪師』などは、歌手の力を最大限引き出すことに成功しており、躍動感に溢れる演奏に仕上げていました。

その意味で、いかに名人、巨匠といえども、修正が可能な録音ではなく再現が不可能な生演奏で常に実力を発揮することは容易ではないことを教えた、サンティさんであったと言えるでしょう。

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