ささやかで体験的な「ブルックナーとマーラーの比較」
現在、国内外の交響管弦楽団にとって、ブルックナーもマーラーも演奏会に欠かすことの出来ない作曲家となっていますし、今や専門家の団体だけでなく愛好家が取り上げることも日常的な光景です。
特に、愛好家団体にとってはブルックナーやマーラーの交響曲は節目や記念の演奏会などを華やかに彩る、重要な作品と言えるでしょう。
私も、演奏会の会場で二人の作品に耳を傾けることは、音楽を鑑賞する際の大きな楽しみの一つとなっています。
そのような一方で、ブルックナーの交響曲は録音よりも会場で耳を傾ける方がよりよく作品に親しめるるとともに、マーラーの交響曲は会場で聞くとマーラーの脳内の様子が目の前に現れるようで、録音で聞く方が心安く鑑賞できる、という素朴な実感を抱くところでもあります。
管弦楽曲だけでなく器楽曲、歌曲、歌劇など、いずれの分野も基本的に会場で鑑賞することを好む私が録音の方が望ましいのではないかと思う作曲家はマーラーのみです。
マーラーに関してこのように考えるのは、2003年10月18日の東京交響楽団の第507回定期演奏会での経験によります。
すなわち、井上道義の指揮、佐藤しのぶのソプラノ、エルザス・モールスのメゾ・ソプラノによる交響曲第2番「復活」を聞いた際に、マーラーの創作力が半球状のお椀から無限に溢れ出る様子が視覚的に明瞭に把握できたような感覚に見舞われたのでした。
もちろん、今もマーラーの演奏を会場で鑑賞するのは嬉しいものではあるものの、こうした経験はそれまでに覚えがなかっただけにひときわ印象的であり、今でも鮮やかに思い出されるところです。
私の、ささやかで体験的なブルックナーとマーラーの比較、であります。
<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions for Works of Bruckner and Mahler (Yusuke Suzumura)
Works of Bruckner and Mahler are important not only for professional orchestras but also for amature organisations. In this occasion I express miscellaneous impressions of these composers.
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