経営改善へ各球団のあの手この手

去る5月25日(月)、日刊ゲンダイの2020年5月26日号25面に連載「メジャーリーグ通信」の第69回「経営改善へ各球団のあの手この手」が掲載されました[1]。

今回は、「7月4日前後の開幕」を目指していた大リーグと各球団の経営面上の取り組みを取り上げています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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経営改善へ各球団のあの手この手
鈴村裕輔

「7月4日前後の開幕」とされていた大リーグの開幕は、7月24日前後となった。

突然地球を襲った宇宙人と人類の死闘を描くウィル・スミスの主演映画『インデペンデンス・デイ』(1996年)を参照するまでもなく、1776年7月4日の独立宣言公布を記念する独立記念日は米国にとってひときわ重要な日だ。

何より、7月4日に各地の球場に星条旗がはためきながら大リーグの公式戦が行われれば、たとえ無観客であるとしても「新型コロナウイルスとの戦いに勝利した」という象徴として大きな意味を持っただろう。

一方、7月24日は、本来であれば東京オリンピックの開幕日であった。

2020年のスポーツ界にとって最大の催事となる夏季五輪が1年延期になったところに大リーグが開幕すれば、人々の注目が高まることは想像に難くない。

それとともに、各球団は公式戦の再開に先立ち、経営上の問題を解決しなければならない。

販売済みの公式戦の入場券の払い戻しなどは、そのような緊急の問題の一つだ。

実際、大リーグ機構は4月28日に全球団に対して入場券の払い戻しの方針をまとめ、速やかに公表するよう求め、翌日には各球団がそれぞれの対策を発表している。

タイガースは一回券の購入者に対して「全額払い戻し」か「2020年の公式戦の購入の際に利用できる30%のボーナスクレジット」のいずれかを選択するよう提案した。

また、入場券を払い戻しせず、「ボーナスクレジット」を選択した場合、新型コロナウイルス感染症対策に従事している医療関係者や経済的な被害を受けたデトロイトの非営利団体の従業者の支援などのプログラムに参加することが出来る。

「30%」という率はタイガースが最も高いものの、ツインズは15%、インディアンズは10%、カブスは5%といったように、他の球団も払い戻しの他にボーナスクレジットを選択肢として用意している。

大リーグ機構による要請は「試合が行われたないのに高価な入場券の払い戻しに応じない」と訴訟を起こされた直後に出されている。このことからも、関係者が、放映権料と並び球団の収入の柱となる入場券収入の維持だけでなく、訴訟によって高額な和解金や賠償金を支払う事態を回避しようとしていることを示している。

これに対して、アスレティックスが本拠地オークランド・コロシアムの年間使用料120万ドルを期日までに支払っていないとされる問題も興味深い。

アスレティックス側は「公式戦が行われていないため支払い能力がない」とするものの、この主張をそのまま受け入れる関係者は少ない。

本拠地、さらにはオークランドからサンノゼやラスベガスなどに球団を移したいアスレティックス側が、「経営は最悪で、状況の打開には移転しかない」と移転の根拠作りのために球場の使用料の問題を利用しようという指摘さえある。

大リーグの各球団は、それぞれの事情を抱えつつ、経営環境の悪化を乗り切ろうとしているのである。
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[1]鈴村裕輔, 経営改善へ各球団のあの手この手. 日刊ゲンダイ, 2020年5月26日号25面.

<Executive Summary>
What Is an Important Point for the Owners before Starting the 2020 MLB Season? (Yusuke Suzumura)


My article titled "What Is an Important Point for the Owners before Starting the 2020 MLB Season?" was run at The Nikkan Gendai on 25th May 2020. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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