尹錫悦政権の発足により日韓関係はどのように推移するか

昨日、韓国の第20代大統領に尹錫悦氏が就任しました。

革新系の文在寅前政権を経て、5年ぶりの保守系政権の誕生により、日米関係を重視する外交への転換と日韓関係の改善が期待されます[1]。

ところで、韓国の政治は、1987年の民主化宣言以降、保守と革新の政権交代により、外交政策が日米重視と南北間の融和の優先のいずれかで揺れ動いてきたのは周知の通りです。

文前政権の場合は、徴用工訴訟問題や軍事情報包括保護協定破棄問題などで日本との関係が悪化しました。

一方、李明博氏や朴槿恵氏などの保守政権は、発足直後は対日関係を重視する態度を示しています。

こうした外交政策の変化は政権の特徴を反映するとともに、支持層の意向を汲んだものでもあります。

もとより、大統領選挙という民意によって政権を担当する以上、国民の欲する政策を遂行するのは当然のことです。

しかし、保革両党の間での政権交代によって政治が「昼から夜に移るがごとく激変を来」すようなことがあれば、支持者の好評を博することがあるとしても、最終的には「国民はとんだ迷惑をする」[2]ことは想像に難くありません。

その意味でも、二大政党ないし二大勢力は異なる主義を持つとしても、それぞれの主義の差は僅少でなければならないと言えます。

しかも、保守政権も政権の末期、あるいは支持率が低下した際は日本に対して強硬な姿勢を示しがちであるのは、例えば当時の李明博大統領が2012年に竹島に上陸したことからも明らかです。

それだけに、発足当初の日韓関係の改善を志向する態度をどこまで維持できるか、尹政権の今後の動向が注目されます。

[1]韓国外交 日米重視に転換. 日本経済新聞, 2022年5月10日朝刊3面.
[2]石橋湛山, 湛山座談. 岩波書店, 1994年, 157頁.

<Executive Summary>
Will the Yoon Suk-yeol Be Able to Recover and Maintain the Relationship with Japan? (Yusuke Suzumura)

Mr. Yoon Suk-yeol became the 20th President of the Republic of Korea on 10th May 2022. In this occasion we examine possiblities of the Yoon Administration to recover and maintain the relationship with Japan.

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