【追悼文】大町陽一郎さんについて思い出すいくつかのこと

去る2月18日(金)、指揮者の大町陽一郎さんが逝去しました。享年90歳でした。

大町さんがウィーン国立音楽大学で指揮を学び、ヘルベルト・フォン・カラヤンやカール・ベームらに薫陶を受けるとともに、1968年に西ドイツのドルトムント市立歌劇場の常任指揮者に就任し、1980年にはウィーン国立歌劇場を指揮し、1982年から1984年にかけて専属指揮者を務めるなど、様々な「日本人初」を成し遂げ、日本の指揮者界の発展に貢献したことは周知の通りです。

また、日本国内では東京都交響楽団の専属指揮者、東京フィルハーモニー交響楽団の専属指揮者を務めたほか、東京藝術大学で後進の指導にも当たりました。

さらに、1988年4月にはケルンの日本文化会館の館長となり、日独の文化交流の発展にも尽力しています。

いわば「国際派」[1]として活動した大町さんは、私にとっては『クラシック音楽のすすめ』(講談社、1965年)の著者として印象深い方でもあります。

東京都立青山高等学校1年生の時に校内の図書室で借り受けた同書の、「オーケストラの演奏を聞くのなら、各楽団が日頃の活動の成果を披露するために行う定期演奏会が最もよい」という趣旨の記述は、現在に至るまで私が各楽団の定期公演を主たる鑑賞の対象とする契機となりました。

その意味で、大町さんは私にとって音楽鑑賞上の恩人というべき存在であり、『クラシック音楽のすすめ』を手にした最大の成果でもありました。

60年以上にわたり指揮者、教育者として活躍した大町陽一郎さんのご冥福を、改めてお祈り申し上げます。

[1]喜び二重奏、大町陽一郎氏. 読売新聞, 1988年4月18日夕刊13面.

<Executive Summary>

Miscellaneous Memories of Professor Emeritus Yoichiro Omachi (Yusuke Suzumura)

Professor Emeritus Yoichiro Omachi, a conductor, had passed away at the age of 90 on 18th February 2022. In this occasion I remember miscellaneous memories of Professor Omachi.

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